エンジニア業界の現実：転職希望者の心理と企業側の認識ギャップ

最近、エンジニアの転職希望理由についての新たな調査結果が発表されました。ファインディ株式会社と株式会社ネオマーケティングが行ったこの調査は、IT関連部門の従業員と経営者の視点を合わせ、現状を明らかにしています。

調査の背景と目的

デジタルトランスフォーメーション（DX）やAI技術の進展に伴い、エンジニアの役割はますます重要性を増しています。企業にとって、優れた人材の確保と育成は、競争力を保つための欠かせない要素となっています。しかし、リモートワークの普及や働き方の多様化が進む中で、従業員の価値観や優先事項も変化を見せています。そこで本調査では、エンジニアの転職理由や働き方について、経営者と現場従業員の認識の違いを探ることが目的とされました。

主な結果

調査によると、エンジニアが転職したい理由として最も多かったのは「収入を上げたい」と「評価が適正でないと感じる」という2点でした。具体的には、全体の49.0%が収入増を望み、IT関連部署に限るとその比率は51.8%に達する一方、評価の適正さに対する不満も同様に高いことが分かりました。これは、転職を希望する背景には自身のスキルや成果が正当に評価されていないとの思いが強くあることを示しています。特に、経営者は「カルチャーの良さ」や「社内の雰囲気」を評価基準として重視する傾向が強いですが、エンジニアは明確な評価制度と報酬に直結する仕組みを求めていることが浮き彫りになっています。

リモートワークへの期待

調査では、リモートワークを希望する従業員の割合が全体の88.5%に達し、現場従業員は経営者よりも強くその意向を示していることが見て取れました。特に情報通信業の従業員の98.6%が継続を希望しており、今後の働き方としてもリモート環境が主流となっていく可能性が高いことが示されています。しかし一方で、リモートワークに伴う「コミュニケーション不足」「管理の非効率性」などの問題も浮上しています。経営者と現場の従業員との間には、リモート環境に適応するための認識のズレがあり、特に評価やフィードバックについて改善の余地があるとされています。

エンジニアの職場環境と評価に対する不満

従業員たちは、自己の評価制度や評価プロセスに対する不満を抱えており、「正しく評価されていない」と感じる割合は40代、50代のエンジニアでは62%に上ることが分かりました。また、従業員数50～100人未満の企業においては76.6%が「正しく評価されていない」と感じており、これは評価基準のあいまいさやコミュニケーション不足が影響していると考えられます。

経営側の意識の歪み

驚くべきことに、経営者の70.3%が「自社は従業員を正しく評価できている」と考えているのに対し、従業員の多数がその逆を語るという大きなギャップが存在しています。この変化が生じる背景には、評価制度そのものの設計や、何をもって評価とするのかの明確さが欠けていることがあるかもしれません。評価とは単に数値をつけることではなく、相手に理解してもらえる対話の場であるべきです。

結論

今回の調査結果から、エンジニアが求めるものは「収入」と「適正評価」であることが分かります。企業はただ単に人材を採用するだけでなく、彼らの価値観や働き方に対する理解を持ち、それに基づく評価や報酬を策定していく必要があります。これは、企業の競争力を高めるためにも欠かせないアプローチです。

今後もこの調査結果を基に、エンジニアが心地よく働ける環境作りが求められます。さらなる働き方の多様性を受け入れるために、企業は意識改革を進めていくことが求められているのです。