ワクチンの効果を高める新たなアジュバントデータベースが誕生

新たなアジュバントデータベースの公開

2025年7月17日、国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所と東京大学医科学研究所の研究チームが、ワクチンアジュバントおよび免疫療法薬の前臨床評価を大きく推進する「アジュバントデータベース（ADB）」を発表しました。このデータベースは25種類のワクチンアジュバントについての網羅的なトランスクリプトームデータを集約しており、その重要な成果は国際科学誌『Cell Chemical Biology』に掲載されました。

アジュバントの重要性

アジュバントとは、ワクチン抗原に対する免疫反応を強化するための成分であります。最近の研究では、アジュバント単体でも感染症やがん、アレルギーに対して免疫応答を促進する可能性があることが示されていますが、その有効性と安全性を評価する方法は未だ限られているのが実情です。このため、アジュバントの開発は他の薬剤に比べて試験が複雑で、上市に時間がかかることが課題でした。

ADBの構築と特徴

今回のアジュバントデータベースは、異なる動物種・臓器・時間・用量から得られた遺伝子発現プロファイルを収集し、標準化された方法で構築されています。特に、広く利用されている毒性データベース「Open TG-GATEs（OTG）」と統合されているため、アジュバントの活性と毒性の予測が可能になりました。

さらに、機械学習を用いたモデルにより、具体的なアジュバントの活性や肝毒性を予測することができ、その結果も実験で実証されています。特に、FK565という免疫賦活剤が肝毒性を示すことが確認されたことは注目に値します。

機械学習による知見

機械学習によるこのデータベースの活用によって、OTGに含まれるコルヒチンが新しいアジュバントとして機能することも確認されました。このように、ADBから得られた遺伝子発現プロファイルは、アジュバントの作用機序や生体応答を推論する上で極めて重要な情報を含んでおり、今後の研究への道を拓くことが期待されています。

データベースのアクセス

これらのデータは、ユーザーフレンドリーなウェブアプリケーションを通じて簡単にアクセスでき、研究者が迅速に情報を解析できる環境が整っています。データベースの活用によって、アジュバントの選定やその作用がもたらす生体応答に対する理解が深まり、効率的なワクチン開発が促進されるでしょう。

この新しいアジュバントデータベースは、アカデミアや製薬業界など、多くの研究者に利用されることが期待されています。免疫療法の発展やより安全で効果的なワクチンの開発に貢献することを目指しています。今後の研究の進展に注目が集まります。