日本のカーボンニュートラル実現に向けた新技術分析
概要
国立研究開発法人の産業技術総合研究所(以下、産総研)は、新しい数理モデル「AIST-TIMES」を開発し、2050年に向けた日本のエネルギー需給をシミュレーションしました。この取り組みは、日本政府のカーボンニュートラル政策における重要な基盤となるものです。
カーボンニュートラルへ向けた挑戦
日本は2050年までに温室効果ガスの排出量をゼロにする目標を掲げています。このためには、特殊な低炭素技術の導入や、それに基づく戦略的な政策提言が不可欠です。AIST-TIMESは、革新的技術の影響を分析できる新たな数理モデルとして、その役割が期待されています。
AIST-TIMESの特長
新たに導入されたAIST-TIMESは、従来の数理モデルが考慮できなかった水素還元製鉄や燃料アンモニアなどの技術の影響を取り入れています。これにより、エネルギー需給のシミュレーションが多様化し、具体的な数値に基づく政策提言が可能になります。今後の電力需要の推移や、各種低炭素燃料の影響についても解析が進められる予定です。
シミュレーション結果の概要
シミュレーションでは、2050年に必要な水素やアンモニアの輸入量を推定しました。高需要ケースでは必要な輸入量は水素換算で2600万トンとされ、低需要ケースでは1500万トンとなりました。これらの数値は、政府が掲げる国内導入目標と一致します。輸入した水素とアンモニアを利用することで、産業や運輸部門におけるCO2排出量を効果的に削減することも可能です。
気候変動対策への寄与
新技術へのシフトにより、CO2除去が必要となる量は大きく削減され、2050年には141から169百万トンの範囲と見込まれています。これは先行モデルにおける数値に比べ、4600万トンから7400万トン少ないことが示され、革新的技術の導入効果を実証しています。
今後の展開
今後は、デジタルトランスフォーメーション(DX)などの関連技術が電力需要に与える影響を分析し、さらなる低炭素技術も考慮したシナリオを展開する予定です。これによって、日本のカーボンニュートラル政策に資する具体的な提言を行っていくことが期待されています。
研究の詳細
本研究は、2025年1月20日に国際的な学術誌『Applied Energy』に掲載される予定です。最新の研究動向やシミュレーション結果に関する詳細は、産総研の公式サイトにて随時発信される予定です。