孤独が動脈硬化を促進
2024-12-16 12:47:49

慶應義塾大学の研究が示す社会的孤独と動脈硬化の新しい関係性

社会的孤独が動脈硬化を促進するメカニズム



慶應義塾大学医学部の研究チームが、社会的孤独が動脈硬化を進行させる新たなメカニズムを解明しました。この研究は、内科学教室や先端医科学研究所の教授らと連携し、特に“絆”が強い同胞マウスに焦点を当てて行われました。これまでも社会的孤独が心血管疾患リスクに関連していることは報告されていましたが、その具体的なメカニズムは不明確でした。

研究の背景と目的



研究者たちは、社会的孤独が脳視床下部でのオキシトシン分泌にどのように影響を与えるかを探ります。オキシトシンは“幸福ホルモン”として知られ、社交性や感情の制御に重要です。研究チームはオキシトシンが動脈硬化の進行と関わりがあるのかを調査することを目的としました。

結果と発見



実験の結果、社会的孤独ストレスが動脈硬化を促進することが明らかになりました。特に、オキシトシンが肝細胞で脂質代謝を制御する機構が破綻することが関連しており、脂質代謝異常や動脈硬化を引き起こす要因であることが示されました。特に、オキシトシンは胆汁酸の生成や中性脂肪の分解に寄与していることが確認され、全身の脂質代謝を制御している重要な役割を果たしていることが分かりました。

さらに、オキシトシンを経口で補充することで、社会的孤独による脂質代謝異常と動脈硬化が抑制されることも確認されました。この発見は新たな治療標的としての可能性を示唆しています。

社会的つながりの重要性



この研究結果は、社会的孤独が動脈硬化の進行に重要な役割を果たすことを示し、特に社会的つながりや“絆”が脂質異常症の予防に寄与することを再認識させるものです。従来、動脈硬化や虚血性心血管疾患に対する治療法には限界がありましたが、オキシトシンは新たなアプローチを提供するかもしれません。

今後の展望



現在、臨床の現場では脂質異常症の治療薬には胆汁酸生成促進やLPL活性の改善を目的とするものは存在しません。この結果は、オキシトシンを用いた新たな治療法開発の道を開く可能性があります。

研究チームは今後もさらなる研究を進め、オキシトシンと社会的孤独の関係について理解を深めていく予定です。

この研究結果は2024年11月27日に『Circulation Research』誌に掲載されました。


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