戦争の真っ只中に生まれた友情の物語
戦争の暗い影が色濃く漂う時代に、ひときわ明るい光を放つ実話がある。それが『兵隊さんに愛されたヒョウのハチ』だ。この物語は、80年前に遡る中国大陸での日本兵と一个ヒョウの心温まる交流を描いている。物語の主人公、成岡正久さん(当時25歳)は、盧溝橋事件を契機に勃発した支那事変に従軍した日本の兵隊である。
成岡さんが配属されたのは、愛称「くじら部隊」として知られる歩兵236連隊の第八中隊の第三小隊だ。高知県出身の兵士たちは、地元の海から連想される名前に誇りを持っていた。彼らの任務は敵との戦闘と占領した地域の防衛であったが、中国内陸部までの長旅が続く。
昭和14年10月、成岡さんは中国の湖北省陽新県と大冶県の銅山『牛頭山』へ赴くことになる。その地で、運命的な出会いが待っていた。地元の農民から捕獲依頼を受け、ヒョウの巣穴に向かった成岡さんは、親ヒョウを追い払った後、残された子ヒョウを保護する。
この子ヒョウは後に「ハチ」と名付けられ、成岡さんと彼の部隊の仲間たちの生活に大きな影響を与える存在となる。彼らはハチを愛し、育て、そして癒される時間を共有した。
しかし、戦争は容赦なく進行し、部隊は米軍飛行場の機能を破壊する任務に従事することとなる。ハチを連れ立つことはできず、成岡さんは苦渋の決断をし、ハチを上野動物園に預けることにする。最後の夜、成岡さんはハチに別れを告げる中で、仲間たちと共に笑い、涙を流し、思い出を語り合った。成岡さんは「ハチ、俺たちの分も生きてくれ」と熱い思いを語りかけた。
1942年5月、ハチは上野動物園に到着し、その愛らしい姿から瞬く間に人気者となる。しかし、戦局の悪化により、動物園は爆弾の落下を恐れ、動物たちを別の場所へと移さねばならなくなった。ハチの運命はどうなるのか、そして成岡さんとの再会は果たされるのだろうか。
現在、ハチの剥製は高知みらい科学館に展示されており、そこには『ハチの像を建てる会』によって設立された「ハチと兵士」の銅像が併設されている。この像には平和の願いが込められ、多くの人々に戦争の悲惨さと友情の大切さを伝え続けている。
さらに、同会は全県の小学校に本書を寄贈し、その内容を通じて戦争の真実を知ってもらいたいといった取り組みも行ってきた。もはやハチの物語は単なる過去の出来事ではなく、今を生きる私たちにとって重要なメッセージを発信している。
著者の祓川 学氏は児童文学作家として、この感動的な物語を綴っており、作品は涙なしには読めないと多くの読者から支持されている。彼の作品は、命の尊さや友情の深さを改めて私たちに思い出させてくれる。
本書は価格1400円(税別)で、非常に多くの人に手に取られ、愛されています。ぜひ一度、手に取ってこの奇跡の物語を感じてほしいと思う。