新しい旅の物語『駅と旅』
旅の始まりと終わりを見守る場所、駅。その駅をテーマにした短編集、アンソロジー『駅と旅』が創元文芸文庫から刊行されました。この作品集には、砂村かいり、朝倉宏景、君嶋彼方、松崎有理、額賀澪、鳥山まことの6人の作家による新作短編が収められており、日常の中に垣間見える旅のドラマが描かれています。
本書収録の作品には、実際に存在する駅が登場し、それぞれの物語がその場所を舞台に展開されます。旅という非日常の中で人々の感情や出来事が交錯し、出会いや別れ、そして心の成長が描かれています。
収録作品の紹介
砂村かいり「きみは湖」
毎年同じ日に購入する切符が、彼女を「湖に浮かぶ駅」に導きます。恋人の記憶と共に、彼女は旅に出る勇気を見つける旅路が描かれています。
朝倉宏景「そこに、私はいなかった。」
高校三年生の夏、特別な日の思い出を心に抱えた主人公が、西に向かう列車に乗る様子が描写されています。感情が高まる瞬間に、彼女の心境が読者に迫ります。
君嶋彼方「雪花の下」
夫がどこかに去り、彼を追う妻と義姉。雪に覆われた北海道でのふたりの葛藤と成長が描かれ、この物語が持つ普遍的なテーマが心に響きます。
松崎有理「東京駅、残すべし」
巨大なもののけが登場する物語で、立ち上がる「駅」の姿が描かれることにより、旅の中で受け止めるべきものの大切さが浮き彫りにされます。
額賀澪「明洞発3時20分、僕は君に撃たれる」
不倫というテーマを扱いつつ、ソウルの街で交錯する人々の思惑や心理が描かれ、逃避行の行方が問われる内容となっています。
鳥山まこと「辿る街の青い模様」
青いタイルが導く地で、家族や愛する人々との思い出を振り返りながら描かれる優しい物語が、人生の中の大切な瞬間を思い出させてくれます。
書誌情報
本書は文庫判で、324ページにわたり、価格は858円(税込)です。ISBNは978-4-488-80315-5で、表紙の装画は早川世詩男が手掛けています。
まとめ
『駅と旅』は、実際の駅を通じて織りなす6つの物語が心に残る珠玉の短編集です。新しい季節を迎える今、読者はこの一冊を手に取り、旅へと心を巡らせることでしょう。青春や人々の営み、切ない別れと感動的な出会いの数々が、あなたの手の中にあります!