愛知医科大学が発表した最先端の細胞培養法
愛知医科大学の病理学講座での研究チームが、ヒトの未熟な基底細胞を体外で効率的に培養し、さらにそれを短期間で成熟させる新しい手法を開発しました。この成果は、未熟な上皮がどのように成熟していくのかを解明する上で画期的なものであり、再生医療の分野においても重要な役割を果たすとされています。
上皮組織は、皮膚などの体表を覆う重要な組織であり、その強固なバリア構造によって生体は外的脅威から保護されています。この上皮は、最下層に存在する基底細胞が適時に上皮細胞に分化することによって維持されています。しかし、上皮は他の組織に比べて頑丈であり、その分化過程を観察することは非常に困難でした。これにより、基底細胞が成熟する過程でのメカニズムは未解明な部分が多く残っていました。
本研究では、まず新たに開発された薬剤カクテル「YDAC」を使用し、ヒト乳腺の基底細胞を体外で長期的に増殖させました。その後、培養環境からYDACを除去することで、基底細胞を効率良く上皮細胞に分化させる手法が確立されました。このシンプルなアプローチにより、分化前後の比較が可能となり、分化のスイッチに関するメカニズムが明らかになりました。さらに、その結果は三次元培養のオルガノイドや生体組織においても裏付けが取られました。
今回の研究成果において特に注目されるのは、未熟な正常基底細胞とがん細胞との間に意外な共通点があることを発見した点です。この現象は「上皮間葉転換(EMT)」と称され、がん細胞の悪性化(浸潤や転移など)に関与していることが知られています。これにより、本研究で開発された培養技術は、上皮の成熟研究だけでなく、再生医療やがん研究の新たな可能性に広がりが期待されます。
愛知医科大学の研究成果は、2025年4月9日にScientific Reportsのオンライン版にて発表されており、今後の医療技術の進展に寄与することが期待されています。細胞培養技術の革新により、再生医療やがん治療の新たな突破口となることを心より願ってやみません。
本研究に関する詳細は、プレスリリース添付資料をご確認ください。