AIで製造業の検品自動化を加速する
日本の製造業は、少子高齢化による人手不足が深刻な問題となっています。特に検品業務は、人的リソースに依存しており、その自動化が急務とされています。そんな中、株式会社Spark+と株式会社ニチリン白山の共同プロジェクトが注目を集めています。
1. スパークプラスとニチリン白山のコラボレーション
株式会社Spark+は、東京大学の松尾研から生まれたスタートアップで、最先端のAI技術を製造業に応用し、効率化や品質向上を図っています。一方のニチリン白山は、自動車用および工業用ゴムホースを製造する大手企業です。この両社は、ゴムホースの検品業務を自動化するためのPoC(概念実証)を進めてきました。
2. PoCの目的
PoCの主な目的は、AIによるゴムホースの数量管理自動化を実現することです。具体的には、AIが画像を解析してゴムホースの断面を自動で認識し、数量をカウントできるかどうかを検証しました。
3. 実施した技術
PoCでは、Spark+が独自に開発したVision Transformerベースの機械学習モデルを用い、実際の製造現場で起こる様々な条件に対応できるよう最適化を行いました。この手法により、ホースの認識率は99.09%を達成。従来のAI技術では難しい条件下でも高精度で認識が可能であることを証明しました。
4. 現場特有の様々な条件
製造現場では、ホースが傾いていたり、光量が不安定だったり、さらには他のホースによって一部が隠れているという状況がしばしば発生します。Spark+は、これらの条件をあえて再現してAIをテストしました。結果として、AIは照明や画像の質に影響されにくいことが確認され、検品業務の安定性を向上させる手法が見いだされました。
5. 今後の展望
両社はこの成功を受け、実用化に向けたさらなる取り組みに着手しています。
- - 広範な現場環境に対応: 新しい型番や異なる照明条件でもAIモデルを適応させ、より多様な状況での利用を目指します。
- - 品質保証の高度化: 数量カウントだけでなく、不良品(ひび割れ、変色、破損など)の検知も可能にする計画です。
- - 現場システムとの統合: 受注から出荷までのプロセスをAIで自動化し、業務の流れをスムーズにします。
6. 終わりに
今回の取り組みは、単なる作業代替にとどまらず、製造業における品質保証を進化させ、高い信頼性を持つAIをもって新たな業務プロセスを生み出す第一歩となるでしょう。AI技術の進化は日本の製造業に新たなスタンダードをもたらす可能性を秘めています。株式会社Spark+の本田純平社長は「AIが実務の現場で高い信頼性を発揮できることを実証した」と述べ、両社の共同による品質保証の未来を期待しています。