アストラゼネカの新たな調査結果
アストラゼネカ株式会社は、肝細胞がん(HCC)患者に関する重要な調査を実施しました。この調査は2024年4月から5月にかけて行われ、173名のHCCと診断された患者を対象に、治療や体調変化に対する行動を探りました。この研究結果は、生活習慣病が原因で発生したHCCが、ウイルス性肝炎からのものと比べて進行度が高く、治療選択肢が限られていることを示唆しています。
調査の背景
肝細胞がんは、日本国内で発生するがんの中で死亡原因の第5位に位置し、2023年には約39,000人が新たに診断を受け、約24,000人がこの病で命を落としました。HCCの主なリスク要因には、B型およびC型肝炎ウイルスの感染、そして生活習慣に起因する疾患が含まれます。特に、メタボリックシンドロームなどは非アルコール性脂肪肝炎につながり、HCCを引き起こす主因となる可能性が考えられます。
調査結果の要点
調査結果からいくつかの重要なポイントを挙げます。
1.
肝炎罹患歴の減少
2010年以前に診断された患者の74%がB型またはC型肝炎に罹患していたのに対し、2021年以降はその割合が26%にまで減少しています。これは、肝炎治療の進展によるものと考えられます。
2.
治療選択肢の不均衡
初回治療において、B型・C型肝炎に罹患歴のない患者が薬物治療を受けた割合は24%でしたが、罹患歴のある患者はわずか3%でした。この結果から、生活習慣病が原因となるHCC患者は、初期からより進行した状態で診断されている可能性が示唆されています。
3.
次治療までの時間は短い
初回治療から次の治療が開始されるまでの期間は、B型・C型肝炎に罹患歴のない患者で12.0カ月、罹患歴のある患者では31.9カ月と、有意差が認められました。進行度が高い状態で発見されるため、再発のリスクも高まるのです。
4.
報告の遅れ
HCC治療中に体調変化を感じたにもかかわらず、64%の患者が「次の診療日まで待って報告する」と応じました。特に「我慢できる範囲」と判断してしまうことが多く、迅速な報告が行われていない現状が浮き彫りになりました。
今後の展望と課題
国立がん研究センターの奥坂拓志医師によると、生活習慣病由来のHCCが増加している現状を受けて、患者の自己管理や医療従事者とのコミュニケーションが不可欠であると述べています。治療に役立つ情報を患者に提供し、早期対応ができる体制を整えることが重要です。また、アストラゼネカは、HCCに関連する様々な免疫療法の研究も進めており、さらなる治療法の開発が期待されています。
結論
アストラゼネカの調査からは、生活習慣に起因する肝細胞がん患者が抱える課題と、それに伴う医療ニーズが浮き彫りになりました。治療の選択肢や医療従事者とのコミュニケーションを強化することで、患者のQOLを向上させることが求められています。今後もこれらの調査結果を基に、患者支援が進むことが期待されます。