ルチル型二酸化ゲルマニウム薄膜の革新
最近、Patentix株式会社はルチル型二酸化ゲルマニウム(r-GeO2)薄膜におけるN型導電性の存在を世界で初めて確認しました。この発見は半導体技術において重要な進展であり、パワー半導体デバイスの実用化に向けた大きな一歩となるでしょう。
背景
私たちの生活に欠かせない家電製品や電気自動車(EV)などは、パワー半導体を介して電力を変換して動作しています。この際、電気エネルギーが熱として無駄になることで、脱炭素社会の実現が進まないという課題があります。この問題を解決するためには、シリコン(Si)など従来の材料から、炭化ケイ素(SiC)や新たな材料への移行が必要です。r-GeO2は、4.6eVという大きなバンドギャップを持ち、低い損失でパワー半導体を実現できる可能性があります。
実用化が進んでいるSiCは、シリコンよりも約40%の省エネ効果があるとされていますが、r-GeO2はさらに高い約90%の省エネ効果が理論的に示されています。このような特性を持つr-GeO2は、半導体技術において注目されるべき素材です。
技術的な課題
しかし、r-GeO2の研究はこれまで進展が乏しく、高品質な単結晶薄膜を作製することは難しいとされていました。半導体の導電性を制御するためには、ドーピング不純物を精密に添加する技術が求められますが、これも未成熟でした。しかし、Patentixの独自技術であるPhantom SVDを用いることで、これらの課題を克服し、高品質なr-GeO2薄膜の製造に成功しました。
成果と特性
新たに開発されたr-GeO2薄膜は、その均質性が向上し、ドーピング不純物の添加による導電性の制御が可能になりました。ホール効果測定によって、全ての試料でN型導電性が確認されたことは、世界初の成果です。キャリア濃度は10の18乗~10の20乗 /cm3の範囲で調整可能で、半導体デバイス作製において重要な要素です。
この測定結果は、ホール起電力の値の強い発現や、非常に小さな測定誤差を示すF値が1に近いことから、非常に信頼性の高いものであることが証明されました。
将来展望
Patentixは、今後r-GeO2を基にした半導体デバイスの開発を本格的に進める方針です。初期段階として、構造が単純なショットキーバリアダイオードの試作が予定されています。この試作を通じて、r-GeO2の省エネ性能を評価し、さらにHEMTやFETといった各種トランジスタの開発にも着手していく見込みです。
この成果は、脱炭素社会の実現に向けた新たな道を切り開くものであり、半導体業界において革命的な進展をもたらす可能性が期待されます。