ニッケル酸ビスマスの圧力誘起電荷非晶質化の発見
最近、東京科学大学の研究グループがニッケル酸ビスマス(BiNiO3)における圧力誘起電荷非晶質化現象を発見しました。この研究は、熱膨張問題の解決に寄与する新たな材料の開発が期待されています。この発見は、ペロブスカイト型酸化物に基づく新しい電子的特性の探求に大きな一歩を持たらすものです。
研究の背景
ペロブスカイト型酸化物は、その特異な結晶構造によって多彩な物理的特性を持つことが知られています。特にBiNiO3は、高温・高圧環境で相転移することが知られており、負熱膨張現象を示すことが期待されています。これまでの研究によると、BiNiO3は低温でも新たな電子相を呈する可能性があるとされていました。
発見の詳細
研究チームは、BiNiO3を250K以下の低温で圧縮する実験を行った結果、Bi3+とBi5+の秩序配列が消失し、電荷グラス状態に移行することを確認しました。この状態では、ビスマスイオンがランダムに配列し、従来の秩序が失われています。興味深いことに、この電荷グラス相を温めると、負熱膨張が発生することも明らかになりました。
さらに、BiNiO3のNiを一部Feで置換したBiNi1-xFexO3も負熱膨張材料として利用されています。この新たに発見された電荷グラス相でも同様の負熱膨張が観察されたことにより、今後の新材料開発への期待が高まっています。
研究の意義と今後の展開
本研究の成果は、2023年3月5日付の「Nature Communications」に発表され、広く科学界から注目を集めています。研究チームのメンバーには、多くの専門家が参加しており、各分野からの知見が結集されています。
今後の展開としては、BiNiO3の電荷グラス状態が強誘電性を持つことが示唆されており、Niの持つ磁性との相関を解明することが興味深い課題として挙げられています。また、類似の化合物においても高圧・高温や高圧・低温環境での異常な挙動を確認していきたいとしています。
この発見は、熱膨張問題を解決するための新たな材料開発の道を開くものとして、今後も研究が進むことが期待されます。