ラボオートメーションが加速させるバイオ研究の進化:高度人材のタスク変化と求められるスキル
近年、バイオテクノロジー分野は目覚ましい発展を遂げており、研究開発の効率化と高度化が求められています。その中で、注目を集めているのがラボオートメーション(自動化)です。自動化によって、研究者はより高度な分析やデータ解析に集中できるようになり、研究の進展が期待されています。しかし、同時に、高度人材のタスクやスキルにも変化が生じることが予想されます。
パーソルテンプスタッフ株式会社が大阪大学大学院工学研究科と協働で開設した「パーソル高度バイオDX産業人材育成協働研究所」の特任研究員である桑原寿江氏は、日本労務学会にて、小松恭子氏、松繁寿和氏とともに「バイオ研究領域のラボオートメーションと仕事の高度化」と題し、高度人材のタスク・スキル変化に関する調査結果を発表しました。
バイオテクノロジーとラボオートメーション市場の拡大
バイオテクノロジーは、生物の機能を活用して、医療、農業、エネルギーなど幅広い分野で革新をもたらす技術です。経済協力開発機構(OECD)によると、2030年の世界のバイオテクノロジー市場は、OECD加盟国GDPの2.7%に達すると予測されています。
この市場の拡大を支えるのが、ラボオートメーションです。ラボオートメーションは、研究室における実験作業を自動化する技術であり、効率化と精度向上に貢献します。2030年のラボオートメーション市場規模は、2023年の約1.45倍に成長すると予想されています。
高度人材のタスク・スキル変化
バイオ研究領域では、高度な専門知識とスキルを持つ人材が求められています。大学院レベルの知識や経験を持つ人材が、研究開発の現場を担っています。ラボオートメーション化が進むことで、これらの高度人材のタスクやスキルにも変化が生じています。
桑原氏らの調査によると、ラボオートメーション化によって、従来人手に頼っていた実験作業の一部が自動化され、研究者はより高度なデータ解析や研究戦略の立案に集中できるようになっています。しかし、一方で、自動化された機器の操作やプログラム設定など、新たなスキルが求められるようになっています。
プログラミング的思考の重要性
特に、ラボオートメーション化を推進するためには、「プログラミング的思考」が重要になります。プログラミング的思考とは、問題を小さな部品に分解し、手順を明確に記述して解決していく思考方法です。自動化された機器のプログラム設定や、実験プロセス全体の設計には、この思考方法が不可欠です。
今後のバイオ研究と人材育成
バイオ研究領域の将来においては、ラボオートメーション化はますます進んでいくと予想されます。そのため、高度人材には、従来の専門知識に加えて、プログラミング的思考やデータ解析スキル、そして自動化された機器の操作スキルなど、新たなスキルが求められていきます。
パーソルテンプスタッフは、このような人材育成に貢献するため、大学との連携や研修プログラムの開発など、積極的に取り組んでいます。今後も、バイオ研究の進化を支える人材育成を支援していくことで、日本のバイオテクノロジー分野の発展に貢献していきます。