心不全とCKMオーバーラップ
2025-05-08 11:31:33

高齢心不全患者におけるCKMオーバーラップの影響を探る新たな研究成果

高齢心不全患者とCKMオーバーラップの影響



近年、高齢者に多く見られる心不全の管理が大きな課題となっています。心不全は、心血管疾患、慢性腎臓病、糖尿病といった複数の疾患を伴うことが多く、これらの疾患が同時に存在する状態を「CKMオーバーラップ」と呼びます。このCKMオーバーラップが身体機能や長期的な予後にどのような影響を与えるのか、順天堂大学の研究グループが新たな研究を発表しました。

研究背景と目的



心不全は高齢者において再入院や死亡リスクが非常に高い疾患です。これまでの研究では、特に若年者を対象としたCKMオーバーラップの影響が探求されていましたが、高齢心不全患者における詳細な検討はあまり行われていませんでした。それに対し、本研究では高齢心不全患者に焦点を当て、CKMオーバーラップの有病率と、その身体機能や予後への影響を明らかにすることを目的としています。

研究手法



本研究は、2016年から2018年の間、日本国内の15施設で実施された多施設共同の前向きコホート研究「FRAGILE-HF」と、2018年から2019年にかけての4施設で行われた「SONIC-HF」のデータを用いて行われました。対象は、急性非代償性心不全で入院し自力で退院が可能な65歳以上の患者です。具体的には、FRAGILE-HFの1,113名(中央値年齢81歳、男性58.2%)と、SONIC-HFの558名(中央値年齢80歳、男性59.3%)のデータを分析しました。

CKMオーバーラップの有無は、心血管疾患、慢性腎臓病、糖尿病の診断基準に基づいて評価されました。その結果、全体の約50%がCKMオーバーラップを抱えていることが判明しました。

CKMオーバーラップの影響



CKMオーバーラップを持つ患者では、身体機能指標が低いことが確認されました。具体的には、5回椅子立ち上がりテストやSPPB(Short Physical Performance Battery)スコア、6分間歩行距離などのテスト結果が影響を受けていました。また、退院後の追跡調査では、CKMオーバーラップが多い患者は全死亡及び心不全の再入院リスクが高いことが示唆されました。

このことにより、CKMオーバーラップの評価が高齢心不全患者におけるリスク層別化の重要な指標となる可能性があると考えられています。これらの知見は、今後の予防や治療戦略の開発にも活用されることでしょう。

今後の展望



本研究の成果は、日常の診療において高齢心不全患者の身体機能を評価する際に、CKMオーバーラップの把握が重要であることを示しています。特に、オーバーラップの数が多い患者においては、早期に身体機能の低下を特定し、適切な介入を行うことで、将来的な長期予後の改善に繋がることが期待されます。開業医や往診医がこの研究成果を参考にし、一人でも多くの心不全患者の治療に貢献できることを願っています。

研究の発表



この研究成果は、2025年5月6日にEuropean Journal of Preventive Cardiologyのオンライン版で発表されました。今後の研究において、CKMオーバーラップを考慮した新たな治療方針が策定されることが期待されます。


画像1

画像2

会社情報

会社名
学校法人 順天堂
住所
東京都文京区本郷2-1-1
電話番号
03-3813-3111

トピックス(科学)

【記事の利用について】

タイトルと記事文章は、記事のあるページにリンクを張っていただければ、無料で利用できます。
※画像は、利用できませんのでご注意ください。

【リンクついて】

リンクフリーです。