日本とイタリアの新たな農業遺産
2025年8月26日、日本とイタリアの独自の農業システムが新たに世界農業遺産(Globally Important Agricultural Heritage Systems, GIAHS)に認定され、その数が100を超えることとなりました。このニュースは、国際連合食糧農業機関(FAO)の80周年を祝う貴重な節目でもあります。
認定地域とその文化的背景
日本では、和歌山県の有田・下津地域、奥出雲地域、そしてイタリアではアマルフィ海岸が新たに名を連ねました。これらの地域は、それぞれ独自の地形や気候に基づいて育まれた文化と農業技術の結晶として、多様性や伝統を象徴しています。
アマルフィのレモン畑
アマルフィ海岸の段々畑は、急斜面を活かした農業の典型例です。急峻な土地には、レモン、オリーブ、ブドウが栽培されています。特に「スフサート・アマルフィターノ」と称されるレモンは、栗の木で作られた棚のもとで丁寧に育てられ、収穫時期には農作業者がバランスを取りながら幼い木々の間を行き来する姿が見られます。この技術は「フライング・ファーマー」として知られ、トラディショナルな農法の象徴でもあります。また、アマルフィの段々畑はユネスコの世界遺産にも登録されており、観光名所として訪れる人々にとっても魅力的な存在です。
有田・下津の温州みかん
和歌山県の有田・下津地域では、400年以上にわたり温州みかんが栽培されています。この地域の農業は急斜面に特化し、石積みの階段園が土壌の保水力や排水を助け、30品種以上のミカンが生産されています。地元の農家は伝統的な技術を用いているため、有機的で持続可能な農業が行われています。みかんにまつわる祭りや文化はこの地方の豊かな伝統を物語っています。
奥出雲地域の再生農業
奥出雲地域においては、砂鉄採掘の後、荒廃した土地が地域住民による灌漑と農業システムによって再生されました。稲作や放牧、ソバ栽培を組み合わせた独自の農業は、地域資源の循環利用を実現しています。特に黒毛和牛はその肉質の良さを生かして経済的な支えとなり、その堆肥が水田の土壌を肥沃にします。地域の歴史や文化、水資源を大切にしながらも新たな挑戦に適応し続ける様子は、多くの地域に学びを提供しています。
まとめ
これらの新たに認定された農業遺産は、長年にわたり地域の人々によって守られ育まれてきた文化的・生態的価値の体現であり、FAOのカベー・ザヘディ部長が述べたように、持続可能な農業の未来を生み出す重要なシステムです。これらの遺産を通じて、現代の農村社会は過去の知恵を受け継ぎ、更なる発展を目指しています。国際的に認められたこれらの地域が、今後どのような影響をもたらすのか、注目されるところです。