地球大酸化の謎
2025-09-13 23:04:27

地球大酸化イベントの背後に隠されたニッケルと尿素の科学

地球大酸化イベントの背後に隠されたニッケルと尿素の科学



約21~24億年前、地球の大気に大量の酸素が生成され、大規模な生態系の変化を引き起こした「大酸化イベント」について、岡山大学の研究チームが新たな見解を示しました。この研究では、海水中のニッケルと尿素がこの重要な現象においてどのような役割を果たしていたのかを明らかにしています。

研究の背景と目的



これまで、大酸化イベントの原因に関しては多くの理論が提案されてきましたが、特に関心が寄せられていたのは、シアノバクテリアと呼ばれる微生物が酸素生成の主な供給源であるという事実です。しかし、シアノバクテリアが光合成を開始してから大酸化イベントが発生するまでの約10億年という時間差は、未解明のままでした。岡山大学は、この時間差の解明に挑んでいます。

実験のアプローチ



研究は、始生代の海水を模した条件下で実施され、紫外線による尿素の生成が確認されました。尿素は、原始シアノバクテリアにとって重要な窒素源であることが示され、これが酸素の生成とどのように結びついているのかを探究しています。また、海水中のニッケル濃度が高いとシアノバクテリアの成長が抑制されることも明らかになり、ニッケルの減少がシアノバクテリアの繁殖を促進し、最終的に酸素の濃度が上昇したことを示唆しています。

研究成果の意義



この研究は、シアノバクテリアの成長に関連する環境要因を理解する上で、極めて重要です。ニッケルと尿素の濃度のバランスが、シアノバクテリアの繁殖を制御し、その結果として世界の酸素レベルを決定づける過程が明らかになり、地球上の生命の起源やその進化に関する新たな知見をもたらします。この成果は、2025年8月12日に「Communications Earth and Environment」に掲載されました。

今後の展望と研究の重要性



今回の研究を通じて、岡山大学の研究者たちは地球の生態系の基本的な側面に迫ることに成功しました。研究グループのメンバーであるDilan M. Ratnayake大学院生は、巨大なジグソーパズルを完成させるような感覚でこの研究に取り組んでおり、実験は順調に進められたものの、考察やモデルの構築には多くの時間と労力がかかったと述べています。

教授である田中亮吏は、ディランさんとの日々の議論を振り返り、予期せぬ発見へと導いたこの研究の重要性を強調しました。これにより、地球史におけるさまざまな自然現象に対する理解が深まり、さらなる研究への期待が高まっています。

結論



岡山大学の最新研究が示すように、地球の大酸化イベントは海洋中のニッケルと尿素のバランスによって制御されており、これは現在の生命の様相を形作る上でも極めて重要な要素であることが示唆されます。今後、この発見が生態系研究や気候変動の理解にどのように寄与するのか、大いに注目されるところです。


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会社情報

会社名
国立大学法人岡山大学
住所
岡山県岡山市北区津島中1-1-1 岡山大学津島キャンパス本部棟
電話番号
086-252-1111

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