がん細胞由来細胞外小胞の結合メカニズムを解明
岐阜大学の研究チームは、がん細胞が分泌する細胞外小胞(EV)が正常な細胞とどのように結合するのか、そのメカニズムを分子レベルで解明しました。これは、がんの転移メカニズムの理解に向けた重要な一歩です。
研究の背景と意義
細胞外小胞は、細胞間の情報伝達に関与し、特にがん細胞から分泌されたEVは、他の健康な細胞に取り込まれることでがんの転移を助けると考えられています。このため、がん細胞由来の細胞外小胞の機能を明らかにすることは、がん転移防止の観点からも非常に重要です。
本研究では、岐阜大学糖鎖生命コア研究所の鈴木健一教授と、博士課程の磯貝樹さん、さらには中部大学の古川鋼一教授らが共同で行い、がん細胞由来の細胞外小胞が正常細胞との結合のメカニズムを詳しく調べました。
研究成果
研究チームは、細胞外小胞が正常な細胞に結合する過程を解析するために、細胞外マトリックスと呼ばれる構造の一部であるラミニンとの関係に注目しました。具体的には、がん細胞由来の細胞外小胞がラミニンに結合することを明らかにし、その際に重要な役割を果たすタンパク質、インテグリンα6β1およびα6β4の存在を特定しました。
加えて、従来の細胞膜とは異なる機構でのインテグリンの活性化が偶然起きるのではなく、テトラスパニンと呼ばれるCD151というタンパク質によって促進されることが発見されました。これは、がん細胞由来の細胞外小胞がどのようにして特定の細胞に結合するのかを解明する重要な手がかりとなります。
さらに、研究により細胞外小胞内のガングリオシドGM1という脂質がラミニンとも結合することが分かり、この結合が細胞に取り込まれる過程でも重要な役割を果たしていることが示されました。
今後の展望
本研究はがん細胞由来の細胞外小胞の標的細胞への結合のメカニズムを解明したことにより、がんの診断や治療に応用できる可能性を示唆しています。がんの転移メカニズムの理解を深めることは、今後のがん治療の新たなアプローチの開発につながるでしょう。
研究の発表
この成果は、2025年4月30日付けで『Journal of Cell Biology』にて発表されました。研究チームの課題は、科学の進展でがん治療の方向性を変えることであり、その真実に一歩近づくことができました。今後、さらにこの研究を広げていくことが期待されています。
以上が、がん細胞由来の細胞外小胞の結合メカニズムの解明に関する研究成果です。がん研究の進展に寄与するこの研究は、医学や薬学の今後の発展に向けた新たな道を開くものといえます。