近赤外光照射により正確に位置を可視化する新しい医療機器
2024年3月、国立がん研究センター東病院とカーディナルヘルス株式会社が共同で開発した「NIRC™蛍光尿道カテーテル」が医療機器として正式に承認されました。このカテーテルは、近赤外光を照射すると蛍光反応を示し、手術中の尿道の位置をリアルタイムでモニタに表示する画期的な技術を搭載しています。
NIRC™蛍光尿道カテーテルの特長
通常の尿道カテーテルでは、術者が尿道の位置を判断するのが困難な場合がありますが、NIRC™蛍光尿道カテーテルは、近赤外光カメラにより蛍光反応を映し出し、モニタ上に位置を明瞭に表示します。これにより、手術を行う医師は尿道の正確な位置を把握しながら、腫瘍の切除や合併症のリスクを軽減しつつ手術を進めることが可能になります。
このカテーテルは特に直腸がん手術などにおいて有効であるとされており、がんの再発を防ぐためには、十分な切除範囲を確保することが求められます。また、直腸に近い尿道の位置を正確に把握することで、尿道損傷のリスクを低減し、患者の安全を確保します。
開発の背景と意義
日本では高齢化とともに直腸がんの患者が増加しています。特にS状結腸と直腸に高頻度でがんが発生することが報告されています。カーディナルヘルス株式会社は、2019年に既に蛍光尿管カテーテルを開発しており、そのノウハウを活かして新たにNIRC™蛍光尿道カテーテルの開発に取り組みました。これは、経済的な背景に合わせつつ、より安全で効果的な手術を通じて患者の生活の質の向上を図る試みです。
医療現場への影響
国内の医療機関において、より多くの外科手術でNIRC™蛍光尿道カテーテルの使用が期待されています。術者からの反響も良好で「この技術があれば、より安心して手術に臨める」との声が寄せられています。また、カーディナルヘルス株式会社の代表取締役社長、野田良氏は「安全な医療の実現に向けた製品開発を続ける」と述べ、今後の展望に意欲を見せています。
国立がん研究センター東病院の取り組み
同病院は、NEXT医療機器開発センターを設立し、産学官連携を通じて新しい医療機器の開発を進めています。その中でNIRC™蛍光尿道カテーテルの開発にも関与し、より良い医療サービスの提供に貢献することを目指しています。
まとめ
NIRC™蛍光尿道カテーテルは、2024年12月に全国の医療機関での販売が開始される予定です。これにより、手術の安全性が一層高まり、多くの患者がその恩恵を受けることが期待されています。医療機器の進化は、患者の未来をより明るくするための重要な手段となるでしょう。