電話とファックスに頼る地域医療、9割以上の病院スタッフが課題を実感
団塊の世代が75歳以上となる2025年以降、医療・介護ニーズを持つ高齢者が増加すると予想されています。そのため、可能な限り住み慣れた地域で生活できるよう、入院患者の在宅復帰が重視されています。国も地域一体となって医療や介護などのサービスを提供する「地域包括ケアシステム」を推進していますが、病院から退院する患者がスムーズに自宅に戻れるためには、病院と地域の関係機関との連携が不可欠です。
しかし、現状では、病院スタッフは退院調整や情報共有において、電話やファックスなどのアナログな手段に頼っているのが実情です。株式会社3Sunnyが実施した調査によると、病院スタッフの9割近くがファックスを日常的に使用しており、電子メールやシステムを使ったコミュニケーションは1割以下という結果が出ています。
患者の在宅復帰を阻害する、電話とファックスの課題
調査では、病院スタッフの9割以上が、患者の在宅復帰におけるコミュニケーションに課題を感じていることも明らかになりました。その課題の多くは、電話が繋がりにくい、折り返しの電話が頻繁にあるなど、電話にまつわるものでした。診療時間や患者のケアで外出しているなど、病院と地域の関係機関との間で連絡が取りづらく、コミュニケーションのずれが生じているようです。
ICT化への期待と課題
調査結果では、病院スタッフの6割以上が、コミュニケーションのICT化を進めたいと考えている一方で、システム導入・維持のコストや地域での使用例がないことなどが障壁として挙げられました。地域で使用するシステムを統一することが難しいことや、地域全体でICT化が進んでいるわけではないという現状も課題として認識されています。
千葉大学医学部附属病院 市原章子氏からのコメント
千葉大学医学部附属病院の患者支援部副部長・医療ソーシャルワーカーである市原章子氏は、ICT化が進む一方で、人的支援の重要性を指摘しています。特に、急性期病院では、患者の状況や価値観を理解し、寄り添うことが重要であり、これはIT技術では代替できないと述べています。しかし、医療DXが推進される中、診療報酬の要請など、IT技術を取り入れていく必要性も認識されています。市原氏は、ICT化できる業務と人の手が必要な業務を明確に分けて、それぞれの業務に最適な方法で取り組むべきだと提言しています。
まとめ:地域医療におけるコミュニケーションのICT化は急務
今回の調査から、地域医療におけるコミュニケーションのICT化は、患者やその家族の希望を叶えるために急務であることがわかります。従来通りの方法では、連絡や調整業務に追われ、患者と向き合う時間が減ってしまう可能性があり、患者の希望を叶えられない状況も起こり得ます。
株式会社3Sunnyは、病院間だけでなく、病院と介護施設、訪問看護・訪問診療などの連携にも取り組み、すべての医療・介護従事者のコミュニケーションを円滑にすることで、誰もが安心して医療・介護を受けられる社会の実現を目指しています。