働き方改革の残業規制、現場では何が起きているのか?
2018年3月から施行された働き方改革による残業規制。その影響は、企業や従業員の働き方にどのような変化をもたらしたのでしょうか?レバレジーズ株式会社が運営する就職支援サービス「ハタラクティブ」は、正社員399名を対象に、残業規制に関する調査を実施しました。
調査結果によると、企業における残業削減に関する取り組みは、従業員の意識改革や業務効率化など、本質的な改善に至っていないケースが多いことがわかりました。
1. 残業時間の可視化は進んだものの、本質的な改善には至らず
調査では、約4割の企業が「残業削減に関する施策を実感していない」と回答。特に小規模企業では半数以上が施策を実施していない状況です。
具体的な取り組みとしては、「残業時間の可視化」が最も多く、次いで「勤怠管理の整備」が挙げられました。しかし、「オペレーションの工夫・改善」や「システムの導入」など、労働生産性を向上させる取り組みは、まだ十分とは言えません。
2. 約5人に1人が「サービス残業が増えた」と実感
残業時間の可視化が進んだ一方で、約5人に1人が「残業規制によってサービス残業が増えたと感じる」と回答しました。これは、残業時間の制限によって、本来の業務時間を超えて働かざるを得ない状況が生じている可能性を示唆しています。
3. 約1割が「給与減」、特に物流業界は深刻
残業規制の影響で、約1割の従業員が「給与が下がった」と回答しました。特に、2024年4月から時間外労働の上限規制が適用された物流業界では、約2割が給与減を経験しています。
物流業界では、長時間労働が常態化しており、残業代が収入の大きな部分を占めているケースが多いため、残業規制の影響が大きく、転職や副業を検討する従業員もいるようです。
働き方改革の課題と今後の展望
今回の調査結果から、働き方改革による残業規制は、必ずしも従業員の労働時間削減や労働環境の改善に繋がっているとは言い切れないことが明らかになりました。
企業は、残業時間の可視化だけでなく、業務効率化や労働生産性の向上など、より本質的な取り組みを進める必要があります。
また、従業員側も、適切な労働時間と報酬を確保するため、労働時間管理の意識を高め、必要があれば労働時間に関する交渉を行うことが重要です。
さらに、オーストラリアで制定された「連絡遮断権」のように、従業員が勤務時間外に仕事の連絡から解放される権利を法的に保障する必要性も考えられます。
働き方改革は、企業と従業員の双方にとって、より良い労働環境を実現するための重要な取り組みです。今後、企業は労働時間管理の徹底だけでなく、従業員の働きがいを高めるための施策を積極的に導入していくことが求められます。
働き方改革のジレンマ:理想と現実の狭間
今回の調査結果は、働き方改革の現状に警鐘を鳴らすとともに、私たちに多くの課題を突き付けています。
残業時間の可視化や勤怠管理の整備など、企業側も努力はしているものの、労働時間の短縮だけが目的になってしまい、本質的な労働生産性の向上には至っていない現状が浮き彫りになりました。
サービス残業の増加は深刻な問題です。従業員は、本来の業務時間内で終わらせるべき仕事を、時間内に終わらせることができず、残業代が支払われないまま長時間労働を強いられている可能性があります。これは、従業員のモチベーション低下や心身の疲労に繋がり、ひいては企業の競争力低下にも繋がります。
給与減も、働き方改革の大きな課題です。残業代が減ることで、収入が減少し、生活に困窮する従業員も出てきています。特に、長時間労働が当たり前だった業界では、その影響が顕著です。
働き方改革は、従業員のワークライフバランスの向上や労働環境の改善を目指した取り組みですが、現状では、従業員にとって十分な効果が得られているとは言えません。
企業は、残業時間の削減だけでなく、従業員のスキルアップやキャリアアップを支援し、労働生産性を向上させるための取り組みを積極的に進めていく必要があります。従業員も、自分の権利を理解し、適切な労働時間と報酬を求める必要があります。
働き方改革は、企業と従業員双方にとって、より良い未来を創造するための重要な取り組みです。今回の調査結果を教訓とし、理想と現実のギャップを埋めるための努力を続けなければなりません。