認知症月間と神戸市の挑戦
毎年9月は認知症月間。これに合わせて、9月21日は「世界アルツハイマーデー」として特に認知症に対する理解と啓発を促進しています。そんな中、兵庫県神戸市が行っている「認知症神戸モデル」は、全国的にも注目されています。このモデルは、超高齢化社会における認知症問題に対して積極的にアプローチし、高齢者やその家族を支えるために作られたものです。
超高齢化社会と認知症
2023年は、団塊の世代がすべて75歳以上になる年です。現在、日本の全人口の約29%が65歳以上、さらに約17%が75歳以上の高齢者です。国の調査によると、65歳以上の高齢者の約28%が認知症や軽度認知障害(MCI)と推計されており、この問題は全国的な重要課題となっています。
認知症は、加齢と共に多くの人が直面する可能性のある病気ですが、本人やその家族は早期に気付くことが難しいのが現状です。このため、早い段階での受診が特に重要であり、神戸市はこの点に注目しました。
認知症神戸モデルの内容
「認知症神戸モデル」は、2019年から実施されている取組みで、主に二つの支援制度に基づいています。ひとつは、早期受診を促進する「診断助成制度」、もうひとつは認知症の患者が事故を起こした場合に支援する「事故救済制度」です。これらの制度は個人市民税均等割への上乗せにより資金を調達しています。具体的には、年間400円の特別税を市民が負担し、全国初となる取り組みが実現しました。
診断助成制度
この制度の下、神戸市では65歳以上の高齢者が医療機関での2段階認知症診断を自己負担ゼロで受けることができます。この制度が始まって以来、約9.1万人が認知機能検診を受けており、早期発見を通じて効果的な介入が期待されています。
第1段階で要精密検査と判断された場合は、第2段階に進む仕組みが整っており、専門医の診断結果に基づいた治療法の選択も可能になります。また、診断を受けた方には、事故救済制度の紹介も行われます。2024年からは新薬の投薬に関する助成制度も開始される予定です。
事故救済制度
「事故救済制度」では、認知症の患者が事故を起こした場合にその影響を軽減するための支援を行っています。この制度により、認知症患者は特定の条件を満たすと市が賠償責任保険に加入し、最高2億円の保険金が支給されます。さらに、事故によって被害に遭った人への見舞金として最高3,000万円の支給もあります。
具体的には、以下の5つのサポートが提供されています。
1.
賠償責任保険:賠償責任を負った場合の保険金支給。
2.
見舞金(給付金):被害に遭った方への経済的補償。
3.
専用コールセンター:事故の相談に24時間対応。
4.
GPSサービス:行方不明を防ぐためのGPS端末提供。
5.
みまもりシール:身元確認を迅速にするシール配布。
これらは、認知症患者が安心して生活できる環境の構築を狙ったものです。
社会全体での支援
神戸市では、年間約3億円のコストがかかりますが、その負担を広く市民が分かち合うことが求められています。このような取り組みは、若者を含むすべての世代にとって、重要な社会的責任であると考えています。
世界アルツハイマーデーの取り組み
9月21日には、認知症の普及啓発を目的にオレンジ色でのライトアップが行われます。これにより、認知症に対する理解を深め、社会全体での支援を呼びかけます。
神戸市は、日本での子育て支援でも全国トップクラスの評価を受けています。今後も赤ちゃんからお年寄りまで、全ての市民が安心して暮らせる街づくりに取り組むことを約束しています。
まとめ
「認知症神戸モデル」は、全国的に見ても先進的な動きとして評価されており、特に高齢化社会の進行に伴う認知症問題への新たな解決策を提示しています。今後の動きにもぜひ注目していきましょう。