遺伝性難聴に対する新たな希望
耳の健康を損なう遺伝性難聴。その根本的な治療法がない中、順天堂大学医学部耳鼻咽喉科学講座の神谷和作准教授と宇梶太雄非常勤助教らが、東京大学と共同で新しい遺伝子治療法を開発しました。この研究は、内耳の遺伝子変異を効率よく修復し、正常な聴覚を取り戻す可能性を示唆しています。
遺伝性難聴の現状
遺伝性難聴は、出生児1,600人に1人が影響を受けると言われ、主に130種類以上の遺伝子変異によって引き起こされます。その中でもGJB2遺伝子の変異が最も多く見られ、内耳の機能に重大な影響を及ぼします。この遺伝子は内耳のギャップ結合タンパク質の構成要素であり、聴覚の維持に必要不可欠です。
新技術の開発
これまで、遺伝性難聴の治療には遺伝子補充療法が主流でしたが、顕性遺伝型の変異には効果がありませんでした。そのため、研究者たちは遺伝子書き換えが可能なゲノム編集技術の導入を検討しました。具体的には、順天堂大学が開発したアデノ随伴ウイルスベクター(AAV)と、東京大学が開発した新しいゲノム編集ツールSaCas9-NNG-ABEを組み合わせることにより、内耳での遺伝子修復を実現しました。
この共同研究により、GJB2遺伝子の変異を効率的に修正し、内耳の異常を正常に戻すことが初めて達成されたのです。
研究の成果
研究チームは、モデル動物およびモデル細胞に対して一度の投与で標的とする遺伝子変異を修復することに成功しました。これにより、内耳のイオン環境の恒常性を維持するためのタンパク質の構造が改善され、物質輸送能の回復も確認されました。
今後の展望
今回の進展により、GJB2変異による遺伝性難聴だけでなく、他の多様な遺伝子変異に対しても対応できる治療法が期待されます。この技術が進化することで、若年発症型両側性感音難聴のような他の疾患への応用も視野に入っています。
まとめ
遺伝性難聴に対する根本的な治療法の開発が進んでいるというニュースは、多くの人々に希望を与えます。今後、さらなる研究が進むことで、治療の選択肢が広がり、多くの患者の聴覚が回復する可能性が高まることでしょう。今後の研究成果に注目が寄せられています。