がん細胞増殖の解明
2025-09-03 10:44:49

ポリアミンがん細胞の増殖促進メカニズム解明と医療応用の展望

ポリアミンがん細胞の増殖促進メカニズム解明と医療応用の展望



近年、ポリアミンの一種であるスペルミジンがアンチエイジング作用を持つとして注目を集めています。しかし、その一方でポリアミンはがん細胞の増殖とも関連があることから、そのメカニズムの解明が求められていました。東京理科大学の研究チームが実施した研究が、ポリアミンががん細胞においてどのように機能するかを明らかにしました。

ポリアミンの役割



ポリアミンとして知られるプトレッシン(PUT)、スペルミジン(SPD)、スペルミン(SPM)は、細胞分裂や発育に必要不可欠な物質であり、私たちの体やウイルスの中にも存在しています。特に、これらの物質は細胞の増殖や分化に深く関与しており、健康を維持する上で重要な役割を果たしています。特にSPDの効果として、老化した細胞の機能を回復することや、ミトコンドリアの効率を高めることが報告されています。

しかし、がん細胞の増殖においては、ポリアミンが悪影響を及ぼす可能性があることが1990年代から指摘されてきました。それにもかかわらず、ポリアミンががん細胞においてどのように作用するのかについては十分に理解されていなかったのです。

研究の発見



今回の研究では、細胞増殖を促す因子としてのポリアミンの果たす役割を明らかにしました。具体的には、ポリアミンが翻訳開始因子eIF5A2の生合成を促進し、これががん細胞の増殖に寄与することが示されました。研究チームは、ヒト子宮頸がん由来のHeLa S3細胞株を用いて解析を実施。ポリアミンがリボソームの組成を変化させることで、eIF5A2が効率よく働く環境を整えていることが明らかとなったのです。

この発見により、がん特異的リボソームへのeIF5A2の結合部位が新たな治療標的として浮上しました。これにより、がん治療において副作用が少ない新薬の開発が期待されています。

研究の背景と意義



ポリアミンの生理作用への理解を深めるためには、ポリアミンが体内でどのように機能するかを探求することが不可欠です。今回の研究によって、eIF5Aの二つの異なる型、つまりeIF5A1とeIF5A2が細胞内で果たす役割が明確にされました。eIF5A1は全ての細胞に恒常的に発現し細胞分裂に関与しますが、eIF5A2は特に悪性度の高いがん細胞において過剰に発現することが確認されました。

また、これまでのがん治療薬はポリアミン合成を阻害する方法が主流でしたが、選択性が低く、投薬が中断されるとポリアミンの量が再び増加するという課題がありました。そのため、研究者たちは、ポリアミン特異的に制御され、がん増殖に重要な遺伝子に新たな治療標的を見いだしました。

今後の展望



この研究結果を基に、ポリアミンがどのように細胞内の環境を調整し、がん細胞の増殖を促すのか、さらなる解明が期待されています。将来的には、ポリアミンに基づいた新しい治療戦略が登場することで、がん治療や予防に革新的な進展がもたらされるでしょう。本研究は、2025年7月4日に国際学術誌「Journal of Biological Chemistry」に掲載され、今後の医療現場における具体的な応用が見込まれています。

今回の発見は、ポリアミンががん細胞の増殖メカニズムを解明するだけでなく、新たな治療薬の開発にもつながる素晴らしい可能性を秘めています。今後の研究動向に注目です。


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