大腸がんに対する新たな免疫療法の開発
近年、大腸がんの治療において新たな希望が広がっています。国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所と公益財団法人がん研究会、さらに東京科学大学との共同研究により、APCネオアンチゲンと呼ばれるがん特異的な抗原を標的とした新たながん免疫療法が整備されることとなりました。
研究の背景
がん免疫療法は、遺伝子変異によって生じたがん特異的な抗原をターゲットにするアプローチであり、これまで多くの研究が行われてきました。がん細胞は、通常の細胞には存在しない異常な抗原を持つことがあるため、免疫系のT細胞がそれを認識し攻撃することが期待されます。 ただし、ネオアンチゲンは多様で、患者ごとに異なるため、一般的な治療法としてはハードルが高いのが現状です。
しかし、今回の研究では、特に大腸がん患者の約3%に共通して見られるAPCネオアンチゲンの同定が成功し、この共有性を生かした新しい療法の開発が期待されています。
研究成果の詳細
研究グループは、APCフレームシフト型の変異由来のネオアンチゲンに特化して調査を行い、特に免疫原性が高いターゲットを掘り起こしました。APCネオアンチゲンを認識するT細胞受容体を遺伝子改変したT細胞は、がん細胞に対する高い細胞傷害活性を持っていることが証明されました。また、ネオアンチゲンとT細胞の両方に結合できる二重特異性抗体が開発され、これによりがん細胞のAPCネオアンチゲンに結びつけられたT細胞が強化され、がん攻撃の効果を引き出すことができることが示されました。
これにより、個別化された免疫療法に加えて、「共通のネオアンチゲンをターゲットにした新しいアプローチ」を提示することができました。この療法は特に迅速に適用可能な大腸がん治療につながる可能性があります。
今後の展望
本研究の成果は、2025年5月15日に国際科学誌『Frontiers in Immunology』に発表される予定です。この発表を通じて、がん治療の新たな道が広がり、多くの患者に希望をもたらすことが期待されています。
関連機関の紹介
- - 医薬基盤・健康・栄養研究所: 2015年に設立されたこの研究所は、健康や栄養、医療に関する幅広い研究を行っています。
公式ウェブサイト
- - がん研究会: 日本で最初のがん専門機関で、100年以上にわたりがん研究と治療の発展を進めています。
公式ウェブサイト
研究の進展が、患者の生命を救う新たな治療法となることを心から期待しています。