シアノバクテリアが切り開く光利用の新たな時代
日本の大学と研究機関の共同研究チームが、最古の光合成生物であるシアノバクテリアの新しい光利用システムを発見しました。これは、海洋研究開発機構や岡山大学、東京大学、理化学研究所などの研究者たちが、シアノバクテリアから「微生物型ロドプシン」と呼ばれる新たなロドプシンのグループを発見したものです。この新しいタイプのロドプシンは「シアノロドプシン-II(CyR-II)」と名付けられ、シアノバクテリアが環境に適応するための光の利用方法を広げていることが示されました。
新たなロドプシンの発見
シアノバクテリアは、海洋や淡水、土壌といった多様な環境に生息しており、これらの環境に応じた適応機構が求められてきました。研究者たちは、最近のメタゲノム解析によって、従来の光合成とは異なる光利用メカニズムを持つ新たなロドプシン群を発見し、従来考えられていたシアノバクテリアの機能の幅を広げました。CyR-IIは、緑色光型と黄色光型という2つのタイプに分類され、それぞれ異なる環境に適応して存在することがわかりました。
環境に応じた光の利用
緑色光型のCyR-IIはマングローブや海洋の微生物マットに存在し、黄色光型は堆積物や土壌に見られます。この発見は、光の波長による適応がシアノバクテリアの生存戦略の鍵であることを示しています。それぞれの環境において、異なる光を利用する能力が、進化の過程での選択圧となってきたと推測されます。
シアノバクテリアの進化の秘密
シアノバクテリアは、CyR-IIだけでなく、他のさまざまなロドプシンを遺伝子水平伝播に通じて獲得し、進化してきたことも新たに判明しました。この再評価は、「海洋のシアノバクテリアはロドプシンを持たない」という2020年の知見を覆すものであり、進化の過程でシアノバクテリアが新しい光利用の戦略を開発し、環境に適応してきたことを物語っています。
環境への適応の影響
シアノバクテリアにおけるロドプシンの存在は、単独で生活するよりも、群体を形成するシアノバクテリアに多く見られます。これは、競争する環境下で生き延びるために欠かせない戦略と言えるでしょう。光を利用するためのロドプシンの能力は、その距離と周囲の環境によって形作られており、細胞間での光の奪い合いを勝ち抜くために役立っていると考えられます。
研究の意義
この研究結果は、シアノバクテリアの進化と環境への適応の複雑な関係を探る新たな一歩です。特に日本の海洋環境において、シアノバクテリアが光をどのように利用し、生態系を支えているかを理解するための重要な手がかりとなるでしょう。将来的には、この新しい知見をもとに、さらなる研究が進み、微生物の行動や生態系への影響が広く探求されることが期待されます。
まとめ
シアノバクテリアが進化の過程で獲得した新たなロドプシン「CyR-II」は、光利用における新しいメカニズムを示すものであり、私たちが知っている生物の在り方を一層豊かにする可能性を秘めています。光環境に応じた適応戦略を持つシアノバクテリアは、今後の研究によってさらなる発展が期待されます。これにより、微生物の生態系に関する理解が深まり、持続可能な環境保護や資源管理に寄与することができるでしょう。