生成AI時代における戦略実行力を高めるための課題と解決法
株式会社ローランド・ベルガーが実施した「第5回 上場企業CxO・経営企画責任者への意識調査」によると、生成AI技術の進展により戦略を描くコストが激減する中で、企業において最も重要なのはその戦略を実行し、成果へと結びつける能力であることが明らかになりました。本稿では、調査から得られたデータを基に、なぜ戦略が実行に移されないのか、そして成功する組織にはどのような特性があるのかを探ります。
調査の要点
調査では、以下の2つのポイントが強調されました。
1. 外部協力会社の活用が一般的になっており、「起用したことがない」とする企業は1割に過ぎない。しかし、期待した成果を持続的に得ている企業は3割未満であり、多くが“使いこなせていない”という課題に直面しています。
2. 外部の能力のみに依存するのではなく、発注側の設計が成果を大きく左右します。特に発注側のオーナーシップやプロジェクト目的に関する共通認識が重要です。戦略を成功裏に実行するためには、権限設計、共通認識、外部活用の3つの設計が必要になります。
外部協力会社の活用と課題
調査の結果、多くの企業が外部協力会社を活用していますが、期待通りの成果を上げている企業は少数です。外部の専門家はあくまで自社の実行力を補完するための存在であり、発注先の組織構造や運営方法に大きく依存しています。例えば、プロジェクトに関係する各者が共通の認識を持たなければ、実行のスピードや質に悪影響が出ることもあります。
さらに、外部協力会社の成果不足に関する課題も浮かび上がってきました。調査者の声からも、外部のスキル不足に加え、内部メンバーのスキルやオーナーシップの不足も指摘されました。これらの問題は別個のものではなく、相互に関連しているのです。
成功する組織の特性
成功に導く組織の設計には以下の重要な要素があります。
1.
権限設計:誰が何を決めるのかの明確化が重要です。この透明性があってこそ、プロジェクトが主体的に推進されるリーダーシップが機能します。
2.
共通基盤(経典)の存在:プロジェクト参加者間での基本認識を統一し、情報が一元的に管理されること。これによりあいまいさが排除され、予測可能な進行が可能になります。
3.
外部の力を取り込む設計:外部協力会社をどのように活用するか、その設計が発注側に求められます。責任を持って目的や期待値を明確にし、外部を内面的に組み込むことの重要性が浮かび上がります。
まとめと今後の展望
本調査は、戦略実行における障壁を克服するための設計を再考するきっかけになりました。つまり、組織の設計を通じて、戦略実行に必要な力を引き出すことが求められます。つまり戦略が策定されるだけでなく、実行しながら学び、常に更新していく運用が重要です。
ローランド・ベルガーの企業変革支援チームの責任者である田村誠一氏は、「戦略の賞味期限が短縮する中で、戦略と実行を一体で回し、常に更新していく組織が求められる」と述べています。これからは、個々の施策にとどまらず、権限、責任、情報、リーダーシップを横断した設計が求められる時代です。