心理的安全性と成果を両立するためのMVVの重要性を探る
企業の多くが目指す理想の組織として「心理的安全性があり、かつ成果に貪欲な組織」が挙げられます。しかし現実には、成果が求められるあまり心理的安全性を犠牲にした“ブラック企業型”や、心理的安全があるものの成果を追わない“ぬるい職場型”に偏っているケースが少なくありません。これらの問題を解決するため、株式会社Qandは組織を「心理的安全性」と「成果志向」の2軸で分類する4象限モデルを提案しています。
4象限モデルで見る組織のタイプ
このモデルでは、組織文化を「心理的安全性」と「成果への真剣さ」の2軸で分け、4つのタイプに分類します。
1.
左下:成果に甘く、心理的安全性も低い組織
- この状態は、成果に無関心であり、社員同士の信頼関係も欠如しているため、組織としての活力が失われています。
2.
右下:成果には厳しいが、心理的安全性が低い組織
- 一見して成果を重視しているように見えるが、社員は萎縮し、上司や制度に従うだけの状況です。短期的な成果は上がりますが、長期的には社員の成長を阻害します。
3.
左上:心理的安全性はあるが、成果に甘い組織
- 人間関係が良好で、居心地は良いものの、成果を追求する姿勢が欠如しており、挑戦したい人材が物足りなさを感じて離職することもあります。
4.
右上:心理的安全性があり、成果にも真剣な組織
- これは理想的な組織形態で、社員が安心して意見を言い合い、成長を支え合う環境があります。
どうして多くの企業が理想の組織になれないのか
理想の組織は右上の象限に位置しますが、多くの企業がその境地に至らない理由はいくつかあります。
1.
外発的な圧力に依存すること
- 成果を求めるあまり、上司からのプレッシャーや制度に頼り込む企業が多いです。短期的な成果は出るものの、社員が自由に意見を言えない環境では心理的安全性が失われてしまいます。
2.
心理的安全性だけに重きを置くこと
- 心理的安全が優先されるあまり、成果を追求する姿勢が後回しにされることもあります。例え雰囲気が良くても、挑戦や成長の機会が少ない脆い組織に陥るケースが見受けられます。
このように、外発的な圧力を避けつつ、心理的安全性も大切にすることが求められます。その鍵となるのが、内発的な動機付けを促進するMVVです。
理想の組織に必要なもの ― MVV
心理的安全性を確保しつつ成果を追求するには、社員自身が自らの意義を理解する必要があります。そのために必要不可欠なのが、MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)です。これにより、組織全体で目指す方向性を共有し、内発的な動機付けを促します。
- - ミッション:私たちの存在意義は何か
- - ビジョン:どのような未来を実現したいのか
- - バリュー:その実現に向け、大切にする価値観や行動は何か
MVVがあれば、心理的安全性は「単なる仲良し」ではなく、目的に向かって意見を交わせる健全な関係になります。また、成果への取り組みも「上からの圧」ではなく、合意に基づく自然な責任感として機能します。
言い換えれば、MVVは「安心と成果」を結び付け、組織の成長を支える役割を果たすのです。
まとめ
Qandはこれまで多くの企業のMVV策定や浸透支援を通じて、組織のカルチャーを育むお手伝いをしてきました。この4象限モデルは、その実践に基づいた貴重な知見を元にしたものです。
心理的安全性と成果志向を両立した理想の組織は偶然に現れるものではありません。そのためには、内発的に社員を動かす仕組みが必要で、その中心にMVVがあります。
MVVがあるからこそ、社員が安心して挑戦でき、それと並行して厳しさも持ち合わせることができます。これにより、社員だけでなく企業も同時に成長していくのです。MVVは「あったら良いもの」ではなく、理想の組織に不可欠な要素だと言えるでしょう。