新たなバイオベース接着剤の発見
自動車産業の進化が求められる中、注目を集めているのが国立研究開発法人産業技術総合研究所が開発したミドリムシ由来の接着剤です。この新素材は、持続可能な未来を目指す技術革新の象徴として位置づけられており、期待される効果が多岐にわたり注目されています。
ミドリムシ接着剤の特性
この接着剤は、ミドリムシから得られる多糖類・パラミロン及び脂肪酸を原料にしており、注目すべきはその接着力です。ミドリムシ接着剤は、アルミニウム製の自動車構造材に必要とされる接着強度をクリアし、さらにエポキシ系の接着剤と比肩する力を持っています。すなわち、従来のバイオベース接着剤では実現が難しかった強度の高さを実現しているのです。
環境負担を減らす一助
さらに、この接着剤は冷却することで容易に解体可能であり、再加熱によっても何度でも接着し直すことができます。これにより廃車処理の際に部品の再利用やリサイクルが促進され、環境負担の軽減が期待されます。現代の自動車は多くの金属材料が使用されており、接着剤の解体性は非常に重要です。特にEUで定められたELV指令が示すように、車両を容易に分解し部品を再利用するためには、この特性が不可欠となります。
ミドリムシという資源
ミドリムシは、単細胞の藻類であり、光合成を行う特性を持っています。そのため、持続可能な原料としての利用が期待されており、環境への負担を最小限に抑えることができます。特に、ミドリムシが生成するパラミロンは、90%以上の高純度であるため、回収や加工も容易です。この生物資源の活用は、今後のものづくりに革新をもたらすと考えられています。
実用化に向けた取り組み
今後は、このミドリムシ接着剤をさまざまな用途に応用するための研究開発が進められる予定です。特に、自動車構造材にとどまらず、電子機器材料の接着にも応用が期待されています。技術の社会実装に向けた多面的な評価や改良が行われる中で、各分野への展開が進むことが望まれています。
まとめ
産業技術総合研究所と旭化成の共同開発によるこのミドリムシ接着剤は、持続可能な社会の実現に寄与する可能性を秘めています。接着剤の特性に加え、環境問題の解決にもつながるという点から、将来的には広がる可能性が大いに期待されるプロジェクトです。2024年12月にはポルトでの国際会議でその成果が発表される予定であり、今後の進展から目が離せません。