大阪工業大学が解明した水系ポリウレタンフィルム形成のメカニズム
大阪工業大学の応用化学科に所属する藤井秀司教授の研究グループが、環境配慮型素材「水系ポリウレタンフィルム」の形成メカニズムを解明しました。この研究は、旭化成との共同プロジェクトを通じて成し遂げられました。
水系ポリウレタンフィルムの特性
水系ポリウレタンは、従来の有機溶剤を使用したポリウレタンと異なり、より環境負荷の少ない選択肢です。主に、アクリル樹脂やポリエステルなどの合成樹脂とウレタン系架橋剤を組み合わせることで作られ、耐久性が求められる製品に多く利用されています。例えば、自動車の塗料やフィルムなどです。
環境への配慮
従来の方法では、揮発性有機化合物や温室効果ガスを排出し、環境に悪影響を及ぼす可能性がありました。そこで最近では、水に分散した微細粒子から作る水系ポリウレタンへのシフトが重要視されています。しかし、架橋剤であるポリイソシアネートが水に反応しやすいという課題も残されていました。
画期的なアプローチ
旭化成は、この難題に取り組むため、アクリル系の微粒子とブロックポリイソシアネート粒子という二つのナノメートルサイズの粒子を水に分散させた新しいコーティング剤を開発しました。その結果、加熱によってこれらの粒子が反応し、強固な架橋構造が形成されることができました。特許公開番号は特開2024-74639です。
研究の進展
今回の研究では、粒子同士の相互作用やその構造変化も調査されました。水中で独立して存在していた粒子が、乾燥過程で接触し、加熱によって結合し、最終的に架橋構造を形成することが分かりました。この発見は、今後の複数の微粒子を用いた水系コーティング剤や塗料の開発に大きな示唆を与えるものです。
次世代の塗料や接着剤の可能性
この研究成果によって、耐久性と環境性能を両立させた次世代の塗料や接着剤の開発が期待されます。具体的には、工業や家庭での使用において、より安全で環境にやさしい製品の実現が目指されています。
この成果は、学術雑誌『Progress in Organic Coatings』に掲載されました。詳細な内容については、
こちらからご覧いただけます。
結論
環境配慮型の水系ポリウレタンフィルムが、今後の塗料や接着剤の新しいスタンダードになることが期待されています。大阪工業大学と旭化成の共同研究は、持続可能な未来のための重要な一歩と言えるでしょう。