京セラ、超高速水中光無線通信の革新
京セラ株式会社は、水中環境における短距離光無線通信において、世界最速レベルの伝送容量である5.2Gbpsを達成しました。これは、海洋探査や水中ロボットの運用に必要な大容量データをリアルタイムで伝送することを可能にし、次世代の海洋ICTインフラを一層強化する成果となります。さらに、京セラのこの新技術は、2026年1月に米国ラスベガスで開催される世界最大級のテクノロジーイベント「CES 2026」においても展示される予定です。
開発背景と課題
近年、AUV(自立型無人潜水機)や水中ドローンの登場により、海洋調査や構造物点検、資源探査の需要が高まっています。しかし、従来の主流であった音響通信は、長距離には優れるものの、データ転送速度が数Mbpsに留まるため、高解像度の映像や大容量データの即時共有に関しては限界がありました。この課題を解決するため、京セラは水中環境に特化した光無線通信技術の開発に取り組んできたのです。
超高速水中光無線通信の特長
独自開発のPHY(物理層)
京セラが開発したこの光無線通信技術の核心とも言えるのが、独自仕様のPHY(物理層)です。一般的なPHYは有線通信に基づく設計が多く、水中での伝播に課題がありますが、京セラは水中環境に特化した技術を基にした通信仕様を開発しました。これにより、水中での安定した大容量伝送が実現しました。
帯域幅の拡張
また、京セラは、光学半導体部品の特性を最大限に活用した1GHzを超える広帯域幅を持つ光フロントエンド回路を開発しました。この新技術により、同じ時間内により多くの情報を伝送することが可能となり、従来の水中光無線通信と比べ約2.5倍のデータ転送速度を実現しました。
今後の展開と期待
この技術の活用は、AUVによるリアルタイム映像の共有や水中構造物の精密な点検、大容量データの即時取得など、さまざまな分野に及ぶと考えられます。短距離ではありますが、その圧倒的な速度と高い安定性は、海洋産業や学術研究における技術革新を促すことが期待されます。
今後も、さらなる大容量通信を目指して水中光無線通信技術の研究開発を進め、リアルタイム性が求められる海洋ICT分野において新たな価値を創造することを目指します。京セラは、この超高速技術を通じて、次世代の海洋ICT基盤構築の主要な役割を果たすことでしょう。