第3回全国母乳調査の成果
雪印ビーンスターク株式会社は、雪印メグミルク株式会社と協力し、2015年から実施している第3回全国母乳調査を通じ、1,071組の母子を対象に大規模な研究を行いました。近年、母乳の成分とその変動が母子の個々の背景因子とどのように関連しているのかを詳細に分析した結果が、米国の栄養学会が発行する「Current Developments in Nutrition」に発表されました。この調査は、日本人母乳の主要栄養成分を大規模に評価した初めての試みであり、その重要性は非常に高いものです。
研究背景と目的
母乳は、赤ちゃんの成長や発達に欠かせない最良の栄養源であることが知られています。特に、母乳中の主要栄養成分であるたんぱく質、炭水化物、脂質は、産後の授乳初期から数週間の間に大きな変化を示し、やがて成熟乳に達します。これらの成分には個人差があることがわかっていますが、成熟した母乳成分について広範な研究は不足しています。今回の研究では、日本人母乳の栄養成分に影響を与える様々な母子の背景因子を明らかにすることを目的として行われました。
研究方法
対象となったのは、産後1〜2か月時点で母乳を提供した1,071名の母親です。母乳中の栄養成分濃度とエネルギー含量は、赤外分光法を用いて正確に測定されました。また、母親の食生活は簡易的な自記式食事歴法質問票を使用し調査し、母親と児の背景因子についての情報は自己報告式の質問票で取得しました。これらのデータを基に、母乳の栄養成分と母子の特徴との関連性を線形回帰分析で評価しました。
調査結果
調査の結果、成熟母乳の栄養成分およびエネルギー含量は、主に次のファクターと関連していることが判明しました:
- - 完全母乳育児の実施
- - 母親の体格(過体重または肥満)
- - 児の出生時の体重
- - 産後経過日数
具体的には、母親の体格や授乳の状況、児の出生時体重などが、母乳の成分に直接的な影響を与えていることが理解されました。これにより、母乳の構成要素が母子の特性を反映していることが示され、今後の母乳研究における新たな知見を提供します。
研究成果の意義
今回の研究成果は、国際的な母乳成分の比較研究にも寄与する重要な情報となります。母乳成分の変化が児の成長にどのように影響するかを理解するためには、さらなる長期的な研究が必要です。調査チームは、母乳の成分と児の成長や発達との関係についても引き続き調査を続けていく計画です。
発表概要
本研究は、「母乳中主要栄養成分と母子の背景因子との関連:日本人母乳コホートでの横断研究」と題され、米国の著名な学術誌に掲載されています。著者には、雪印ビーンスタークの商品開発部の研究者たちが名を連ねており、その成果は今後の研究や実用に役立てられることでしょう。
【参考文献】
- - 論文名: Human milk macronutrient and energy contents are associated with maternal and infant factors: a cross-sectional analysis of data from the Japanese Human Milk Study cohort
- - 掲載誌: Current Developments in Nutrition
- - URL: 詳細はこちら
このように、母乳調査の結果は、母親の生活習慣や体格、児の特性がどのように母乳成分に関わるかを理解する手助けとなります。今後もこの研究が進展し、より健康な育児環境の実現に寄与することを期待しています。