インドで実現したマイクロ変電所の実証運転
2023年6月18日、日新電機株式会社は、インドにおいて画期的なマイクロ変電所の実証運転を開始しました。このプロジェクトは、日本の国立研究開発法人NEDOが推進する「脱炭素化・エネルギー転換に資する我が国技術の国際実証事業」のひとつとして位置付けられています。
このプロジェクトの主な目的は、配電網の未整備地域や未電化地域への信頼性が高く、環境負荷が小さい電力供給を実現することです。特に、デリー郊外の地域において、TATA Power-Delhi Distribution Limitedが保有する変電所にマイクロ変電所を導入し、特別高圧送電線から低圧電力への変換を行います。結果として、周辺地域に安定した電力供給を目指しています。
環境問題への対応
インドでは「24×7 Power for All」という政策が掲げられ、全ての地域において365日24時間の電力供給を目指しています。しかし、北部や北東部では送電線が整備されているにもかかわらず、配電網が未整備な地域が数多く存在します。そんな地域では、ディーゼル発電機が普及していますが、その運用は環境に多大な影響をもたらしています。この問題に対する解決策として、NEDOはPower Finance Corporation Ltd.とともにマイクロ変電所による電力供給の実証研究を行うことに合意しました。
本プロジェクトで用いられる電源用計器用変圧器(PVT)は、交流高電圧を測定し、特別高圧電力を低圧へ直接変換する技術です。これにより、従来の大規模な変電所を建設することなく、マイクロ変電所が安定した電力を地域に供給できます。
実証研究の内容
実証研究の中で、日新電機は高容量化したPVTを用いることで、66kV以上の特別高圧送電から200Vの低圧電力を直接引き出します。これにより、最大100kVAの電力を確保することができ、50から100世帯に電力を供給することが可能です。
さらに、マイクロ変電所は簡素な構成で、運用に必要な機器が少ないため、高い信頼性を持っています。これに対して、従来のシステムに比べて、運用コストの削減や、省スペース化、そして二酸化炭素(CO2)の排出削減に繋がります。特に、ディーゼル発電機と比較すると、約45%の二酸化炭素削減効果が期待されています。
運転開始式の実施
運転開始式は、2025年6月18日にニューデリーのTATA Power-DDLのSmart Grid Labで行われました。この式には日本とインドから多くの関係者が出席し、式典は盛大に行われました。技術の進化と環境問題への意識の高まりを背景に、このマイクロ変電所プロジェクトは、インドのエネルギー供給の未来を大きく変える可能性を秘めています。今後のデータ分析を通じて、日新電機は他国への展開も視野に入れているとのことです。こうした取り組みが成功すれば、類似の課題を抱える地域への電力供給の技術普及が加速することが期待されます。