蓄電池の安全性確保に向けた新たな指針
日本では、重要な公共サービスやインフラは様々なリスクに晒されています。その中で、特に注目されているのが蓄電池システムの安全性です。最近、独立行政法人のNITE(製品評価技術基盤機構)は、「公共調達・重要インフラ向け蓄電池システムの安全ガイドライン」の暫定版を発表しました。このガイドラインは、災害時にも機能する蓄電池システムの安全要件を定義しています。
ガイドライン策定の背景
近年、再生可能エネルギーの普及に伴い、蓄電池システムの導入が進んでいます。しかしながら、蓄電池システムに関する事故も増加しています。NITEの調査によると、特に自然災害時には、蓄電池システムが水没することで発煙を引き起こす可能性があります。このような事例を受け、非常時における安全基準が必要とされていることが認識されるようになりました。
安全基準が不在の状態では、地方公共団体やインフラ事業者がどのように安全な蓄電池システムを調達すれば良いのか迷うことになります。そこで、NITEは2026年を見据え、蓄電池システムの安全性向上を目指したガイドラインを策定しました。
重要インフラにおける蓄電池の役割
蓄電池システムは、行政サービスや情報通信、電力供給のバックアップとして使用されます。これにより、重要インフラの機能を維持する役割を担っています。しかし、地震や台風、洪水といった自然災害によって、従来の蓄電池システムが二次災害を引き起こす危険性が高まります。ガイドラインでは、耐地震波衝撃に関する要件が定められており、具体的には震度7の地震でも発火や破裂を起こさないことが求められています。
ISO基準を参考にしたガイドライン
このガイドラインは、国際規格であるISO 37179:2024を参考にしています。この規格は、災害リスク軽減(DRR)を促進するための基本的なフレームワークを提供します。具体的には、災害後に迅速な復旧を目指し、事前の防災対策に重点を置いたものです。ガイドラインは、この考え方を基に、重要インフラの蓄電池システムに求められる安全要件を詳細に列挙しています。
二次災害防止に向けた取組み
ガイドラインの実施により、蓄電池メーカやシステムインテグレータは、この基準に基づいて製品を開発することが期待されます。地方公共団体はこのガイドラインを参照して、調達仕様や補助金交付要綱を作成することで、より安全な蓄電池システムを導入できるようになるでしょう。結果的に、緊急時にも公共サービスや通信、電力供給が問題なく行われる体制が整備されます。
未来への展望
今後、NITEは蓄電池システムに関する専門的な検討委員会を設置し、さらなる安全を追求する取り組みを進めます。暫定版のガイドラインは早急に地方公共団体やインフラ事業者に活用されることが期待されており、本ガイドラインを基にした製品が普及することで、日本全国の重要インフラの安全性向上が図られることが見込まれています。2026年を目処に確定版が発表される予定ですので、今後の動向に注目が集まります。