個人投資家のためのインパクト可視化手法
2023年9月、株式会社三菱総合研究所(MRI)とインパクトサークル株式会社は、物流問題解決を目的としたインパクトファイナンス事業において、投資や事業がもたらす社会的・環境的影響(インパクト)を可視化するための汎用的な手法を開発しました。この取り組みは、企業経営が単なる経済的リターンの追求から、より広範なポジティブなインパクトの創出を目指す流れの中で実現しました。
インパクト可視化の重要性
現代の投資家や企業は、経済的なリターンだけではなく、社会や環境に対する責任を強く意識しています。ポジティブなインパクトを生み出すには、どのようにしてその影響を測定・管理し、分かりやすく可視化するかがカギとなります。特に、インパクト情報の開示に関しては、従来の枠組みが存在せず、各企業が独自のフォーマットや基準で発信しているため、投資家にとって透明性が課題とされてきました。
このような背景を受けて、MRIとインパクトサークルは共同で、ラストワンマイル配送を担うドライバーを支援する事業における評価と分析を行い、その結果として新たなインパクト可視化手法を構築しました。
共同プロジェクトの成果
1. インパクトの測定・管理(IMM)
プロジェクトの一環として、インパクトの測定と管理(IMM)を行うための手順が設計されました。具体的には、以下のフローに従い、インパクト指標の設定からデータ分析までを行いました。
- - 社会課題やステークホルダーの提供価値を整理し、Theory of Change(ToC)やロジックモデルに基づいてインパクト指標を設定。
- - インパクト指標をモニタリングするためのデータを特定。
- - データを収集し、評価・分析を实施。通常は、事業の受益者である業務委託ドライバーに対してサービス提供前後のアンケートを実施。
この手法により、ポジティブ・ネガティブの両方のインパクトを詳細に測定し、得られたデータは事業運営の改善に活用されます。特に注目を集めているのが、「業務委託ドライバーのウェルビーイング向上」という指標で、MRIが開発した独自のウェルビーイング指標が活用されています。
2. インパクト可視化手法の構築
個人投資家を対象にしたインパクトレポート作成のため、インパクト可視化手法が構築されました。具体的な手順は以下の通りです。
- - 個人投資家の投資行動をもとにインパクトジャーニーマップを策定し、ターゲットとなる個人投資家を特定。
- - ターゲットに合ったインパクトレポートの要素を整理し、関心を引く情報チャネルやコンテンツを特定。
- - レポートコンテンツ案を検討し、具体的な情報流れを作成。
これにより、個人投資家は自らの投資がどのような社会的影響をもたらすのか、より明確に理解することが可能になります。
未来に向けて
MRIとインパクトサークルは、このインパクト可視化手法を基に、今後の社会実装を目指しています。顧客ニーズに応じて、インパクト可視化に向けたIMMの設計やデータ収集・分析、インパクトレポートの開示先整理、さらにはコンテンツ作成支援を行うコンサルティングサービスも展開予定です。この新たな取り組みが、個人投資家や企業にとって、より透明で価値のある投資を促進することが期待されています。