衛星「AE2a」の観測成功
2025-11-05 11:39:17

超小型衛星「AE2a」で実現したハイパースペクトル観測の成功

超小型衛星「AE2a」で実現したハイパースペクトル観測の成功



福井大学の青柳賢英准教授が開発した線形可変フィルタを使用した超小型ハイパースペクトルカメラが、株式会社アークエッジ・スペースの6U級超小型衛星「AE2a」に搭載され、衛星軌道上での観測に成功しました。これにより、福井大学が行うハイパースペクトル観測は3回目の成功を果たしました。こちらの成果は、光学性能の向上を目的とし、地上分解能が約20m/pixelの可視近赤外ハイパースペクトル観測を可能にし、植生解析を通じて地表面の状態を把握することに成功したものです。

観測技術の背景


近年、地球環境や農業における観測ニーズが高まっている中、100kg未満の「超小型衛星」が注目されています。これらの衛星はコストや開発期間の短縮が可能で、実用観測プラットフォームとしての地位を固めつつあります。特に、10cm四方の「キューブサット」という規格は、その汎用性から急速に開発が進んでいます。

特にハイパースペクトルカメラは、空間情報と分光情報を同時に獲得することで、地表面の状態を詳細に把握することができ、農業や環境モニタリングに広く応用されています。しかし、従来のハイパースペクトルカメラは大型化しがちで、超小型衛星への搭載は難しいという課題がありました。これに対し、福井大学の青柳准教授は線形可変フィルタと独自の画像処理技術を駆使し、大幅な小型化を達成しています。

ハイパースペクトルカメラの仕組み


本研究で開発されたカメラは、透過波長が位置に応じて変化する線形可変フィルタを使用しています。この設計により光学系が簡素化され、高感度で軽量という特徴を持っています。高感度のモノクロイメージセンサーを搭載し、100mm焦点距離のレンズを用いることで、580〜590kmの軌道高度で約20m/pixelの地上分解能を実現しました。
波長範囲は可視近赤外域の440〜880nmで、89バンド、12bitダイナミックレンジのデータ取得が可能です。また、選択可能な産業用レンズにより、応じた最適な観測条件に変更することができる柔軟性も備えています。

観測結果とその意義


「AE2a」に搭載されたハイパースペクトルカメラは、2025年6月にFalcon 9によって打ち上げられ、軌道上での観測に成功しました。観測データからは、植生、裸地、水域といった地表面の状態が分かりやすく取得でき、地表面の様子を詳細に捉えることに成功しました。これにより、超小型衛星を利用した高性能地球観測の新たな可能性が広がりました。

今後の展開


この成果は、超小型衛星による高性能リモートセンシング技術の実用化に向けた大きな道筋を示しています。今後は、観測波長域を拡充し、赤外線領域への展開も視野に入れ、農業、環境、資源分野における応用を進めていく予定です。
福井大学は、アークエッジ・スペース社との協力を深め、地域社会や産業の課題解決に向けた次世代リモートセンシング技術の社会実装を進めていく方針です。


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