新たな害虫防除技術の発見
静岡大学の研究グループが、インゲンマメの葉や茎に生えるフック状の毛、通称トライコームが、害虫を選択的に捕まえつつ、天敵の寄生蜂にはほとんど影響を与えない仕組みを明らかにしました。この発見は、農薬を多く使わずに害虫を防ぎ、自然の天敵を活用する持続可能な農業技術への応用が期待されます。
研究の背景
害虫防除は農業において重要な課題の一つです。特に、マメハモグリバエなどの害虫は作物に多大な損害を与えるため、寄生蜂などの天敵を利用する生物的防除が必要不可欠です。しかし、植物の持つ物理的防御機構が害虫だけでなく、天敵の行動も妨げるトレードオフの問題が存在していました。そこで、研究チームは植物自身の防御メカニズムがどのように機能しているのかを探求しました。
実験と成果
研究では、インゲンマメのトライコームの有無が、ハモグリバエや寄生蜂の行動や寄生率にどのような影響を与えるのかを観察しました。電子顕微鏡を使用し、インゲンマメの葉のトライコームが害虫を捕らえることが分かりました。実験では、マメハモグリバエが葉に付着した際、30%から40%がトライコームに引っかかり身動きが取れなくなることが確認されました。さらに、8日間の試験では、葉に付着した個体の78.3%が死亡することが記録され、トライコームが害虫にとって「死の罠」として機能することが明らかになりました。
一方で、寄生蜂は同じ葉の上でほとんど自由に移動できることが確認され、その捕まる確率はわずか1.6%から3.3%でした。その理由は、寄生蜂の足が細いため、トライコームのフックに絡まらないからと考えられています。この選択性は、害虫の抑制と天敵の保護を同時に実現するものです。
今後の展望
研究チームはこの発見を基に、トライコームを活用した新たな品種改良や栽培システムの開発が、農業における持続可能な虫害管理の進展につながると期待しています。この技術が普及すれば、化学農薬に過度に依存せず、より環境に優しい農業が実現するでしょう。
用語解説
- - トライコーム(Trichome): 植物の葉や茎に生える毛状の突起であり、害虫の捕獲や植物の保護に寄与。
- - ハモグリバエ: 葉の内部を食害し、白い筋が残る害虫の一種で、農業において重要な害虫とされている。
- - 寄生蜂: 害虫に卵を産み、その幼虫が害虫を食べる天敵昆虫の一種で、農業の生物的防除に利用されています。
本研究は、今後の農業実践に新たな方向性をもたらす可能性を秘めています。これにより、持続可能な製品供給と環境保護が両立する未来が期待されます。