Reprimoタンパク質の新機能とがん治療の展望
2025年2月、米国科学アカデミー紀要に掲載された研究により、Reprimoタンパク質が細胞外から細胞死を誘導する新たな経路が発見されました。この成果は、がん治療に革命的な変化をもたらす可能性があります。
1. 研究の背景
日本の国立がん研究センターにおいて、基礎腫瘍学ユニットの大木理恵子独立ユニット長率いる研究チームは、がん抑制に重要な役割を果たすReprimoタンパク質の機能を探る研究を進めてきました。これまで、Reprimoはがん抑制的に働くと考えられていましたが、その詳細なメカニズムは未解明でした。2000年に発見されたこの遺伝子は、がん細胞の制御に関する重要な手がかりと言えます。
2. 研究成果
特任研究員の滝川雅大博士らのチームは、Reprimoタンパク質が細胞内から細胞外に分泌されることを明らかにし、がん細胞がこのタンパク質を受け取ることでアポトーシス(プログラムされた細胞死)を引き起こすことを世界で初めて示しました。この研究により、正常細胞には影響を与えない一方で、がん細胞のみを標的とする治療法の可能性が開かれました。
3. 新しい治療法の可能性
Reprimoによる細胞死が引き起こされるメカニズムには、カドヘリン様タンパク質受容体、Hippo経路、およびp73が関与していることが分かりました。この新発見は、これらの経路を標的にした抗がん剤の開発へとつながる可能性があります。実験の結果、Reprimoタンパク質やその関連経路を応用した薬剤が、副作用を抑えつつ効果的な治療を実現できるかもしれません。
4. 臨床応用に向けた展望
今後の研究では、Reprimoが細胞やマウスにおいて確認された作用がヒトで応用できるのかを検証する必要があります。臨床試験を経て、がん治療において実用化されることが期待されています。
5. まとめ
今回、Reprimoタンパク質の新たな機能が明らかにされたことで、がん治療に新しい道が開かれました。研究はまだ始まったばかりですが、抗がん剤開発の一助として重要な情報が提供されたと評価されています。今後の研究進展に注目が集まります。