ドイツテレコム社の新たな戦略
ドイツテレコム社は、IT業務の加速を図るために、IBMのAI搭載ソリューション「IBM Concert」を導入した。この新たなアプローチにより、同社はパッチ管理とセキュリティ関連業務において、インテリジェントな自動化を実現することが期待されている。
パッチ管理の重要性
ソフトウェアやシステムの安全性と機能性を維持するためにパッチは欠かせないものである。迅速に進化するIT環境において、もしパッチを適用しなければ、システムは簡単に脆弱になり、安定性を失う可能性がある。しかし、パッチの管理は特に難しく、運用コストが高くつくことも多い。
IBMは、こうした企業が抱える課題を解決すべく、ITシステムの脆弱性を強化しつつ、運用の効率を高める支援を行う。IBM Concertを活用することで、コスト削減とパッチ適用の迅速化を実現し、システム全体のセキュリティを強化することができる。
2028年までに10億のアプリ登場
IDCによる予測では、2028年までに10億ものアプリケーションがリリースされる見込みだ。アプリの数が急増する中で、その運用を円滑に行うためには、関係するチーム間での連携が不可欠である。また、手作業でのエンドツーエンドのパッチ適用プロセスは、障害のリスクを高める要因となる。
この要請に応える形で、ドイツテレコム社はIBMに対し、効率全体の改善と迅速な拡張が可能なソリューションを求めていた。そしてIBMは、同社が直面する複雑な課題を解決するために、IBM Concertを開発した。
劇的なパッチ適用の高速化
IBM Concertを導入することで、ドイツテレコム社はIT運用環境のインテリジェンスを高め、脆弱性管理からレポート作成に至るまで一元化された情報管理が可能となる。このソリューションは、関連データや専門知識を統合し、AIを活用した自動化による効率的なパッチ適用を可能にする。
特に、オペレーティングシステムへのパッチ適用プロセスが全自動で行われることで、パッチ適用にかかる時間は、従来の90分から20分に短縮される。これによりIT部門は、戦略的なタスクにより多くの時間を確保できるようになる。
ドイツテレコム社は、このパイロットプロジェクトを通じて、「Median Time To Patch」を先進的に改善し、脆弱性対応時間を80時間からわずか8時間に短縮することに成功した。これにより、ITセキュリティが強化され、ビジネスリスクへの対処やコンプライアンスも一段と向上する。
専門家の見解
ドイツテレコム社のグループCIOであるピーター・ロイケルト博士は、「当社が提供するすべてのアプリケーション、データベース、サービスの基盤として、セキュアなオペレーティングシステムが必要です。AIの時代、パッチ適用の迅速化は避けられない課題であり、IBM Concertはその解決策として理想です」とコメントしている。
IBMのグローバル・マネージング・ディレクター、スティーブ・カネパ氏も、「通信業界にとって、セキュリティーと信頼性は成功の基盤です。AIと自動化を活用したIBM Concertによって、ドイツテレコム社は複雑かつ急増する脆弱性の発生に迅速に対処できるようになります」と述べた。
IBM Concertの特徴
IBM Concertは、AIを利用した包括的な自動化ソリューションである。このシステムは、パッチ適用プロセスの自動化のみならず、ITオペレーション全体の最適化にも寄与する。
主な機能
- - セキュリティースキャンやCVEデータベースを用いた脆弱性分析
- - システムのトポロジーや依存関係を考慮した最適化されたパッチ適用計画
- - ITサービスマネジメントシステムとの統合による円滑な承認プロセス
- - ハイブリッドクラウド環境全体のコンプライアンスの強化
企業情報
ドイツテレコム社は、世界的な通信企業として、数ばかりでなく、質の高いサービスを提供していることでも知られている。234,600万以上の携帯電話ユーザー、2,500万以上の固定回線、さらには2,200万以上のブロードバンドユーザーを持つだけでなく、企業向けにはICTソリューションも提供している。また、ドイツテレコム グループのIT部門であるデュッセルドルフのDeutsche Telekom IT GmbHも、全社的なITシステムの設計と開発に力を入れている。
AIの進化と共に、IT運用モデルはさらに洗練されることが期待されている。この新たな道筋を歩むドイツテレコム社の動向から目が離せない。