国産牛乳の厳しさが浮き彫りにされる
日本の食卓に欠かせない存在である牛乳。しかし、近年その背後には厳しい現実が広がっています。株式会社帝国データバンクによる調査によれば、酪農業の倒産や廃業が3年連続で増加しており、状況は深刻さを増しています。2024年10月31日までに、負債1000万円以上の法的整理による倒産が4件、休廃業や解散が12件発生しました。合計で16件が業界から姿を消すこととなり、過去10年間でも最多数になる見込みです。
酪農業の厳しい業績状況
2023年度の酪農業者の業績は存続が危ぶまれるほどの低迷を見せています。約4割の業者が赤字に苦しむ中、業績悪化は7割に達しており、その背景には様々な要因が絡み合っています。
特に影響を及ぼしているのは、ロシアのウクライナ侵攻に伴う飼料価格の高騰、円安、さらには光熱費や人件費の急激な上昇です。このような急激なコストの増加に対し、乳価(牛乳の販価)の引き上げが遅れたため、酪農業者は経営を圧迫されています。
飼料価格の高騰が生産を直撃
直近のデータによれば、飼料価格は急上昇しており、特に乾牧草は前年の20年度比で1.6倍に達し、乳用牛の配合飼料も1.4倍に高騰しました。至急的に緩やかに下がりつつあるものの、依然として高水準で推移しています。この飼料価格の高騰は、生乳の生産コストに直結し、経営への影響は計り知れません。
更に、2024年度の全国平均パック牛乳の価格も2020年度より1.2倍で留まっており、生産コストの上昇に見合った価格形成が難しい状況にあります。そのため、酪農業者は思うように収益を上げることができず、経営に打撃を受けています。
高齢化と後継者不足がもたらす追加の不安
加えて、酪農業界は高齢化と後継者不足という大きな課題を抱えています。新たな設備投資に伴う負担感も重なり、経営体力が乏しい業者の淘汰が進んでいるのが現実です。高齢の農家は引退する選択をし、後を継ぐ若い世代がいないため、現状の維持が難しくなっています。
消費者の購買行動にも影響
また、消費者も物価上昇の影響から、少しの価格高騰でも購買量を減らす傾向にあります。これによって、小売店も牛乳の適正価格設定に苦慮しており、酪農業者と消費者の関係にひんやりとした空気が漂っています。このような状況が続くと、国産牛乳が不足するという「酪農危機」が増大するリスクをはらんでいます。
未来への展望
酪農業の未来は決して明るいものではありません。しかし、決して希望がないわけではありません。新たな支援策や、生産コストの見直し、あるいは消費者との対話を通じて、持続可能な構造への転換が求められています。国産牛乳を守るためには、業界全体が団結し、行動を起こす必要があります。消費者、美味しい牛乳を求める全ての人々も、その声を届けることが大切です。今後の動向から目が離せません。