慶應義塾大学による新たな治療薬候補の発表
慶應義塾大学の研究者チームによって、肺非結核性抗酸菌症(NTM症)向けの新しい治療薬候補が開発されました。この研究は、同大学の理工学部応用化学科の高橋大介准教授と戸嶋一敦教授を中心に、東北大学の横山武司助教や微生物化学研究所の五十嵐雅之博士らが共同で行ったものです。
肺NTM症は、マクロライド系抗生物質アジスロマイシン(AZM)が広く使用されている疾患ですが、近年その使用に伴って薬剤耐性菌が増加してきたため、新たな治療法の必要性が高まっています。そこで研究チームは、独自の位置選択的および立体選択的グリコシル化反応を用いた新しい合成法を開発しました。これにより、新規AZM誘導体を迅速に合成し、これを利用した化合物のライブラリーを作成しました。
合成した化合物をNTMに対して評価した結果、新たに創出した誘導体名KU13が、従来のAZMよりも高い抗菌活性を示すことが確認されました。特に注意すべきは、このKU13が薬剤感受性および薬剤耐性の両方を持つNTMに対して、その効果を発揮する点です。
さらに、KU13の作用機序を探る実験も行われ、リボソームの構造変化を誘導し、新たな相互作用を形成するユニークなメカニズムが明らかになりました。この新しい作用機序は、将来的に薬剤耐性を有するNTMに有効な治療薬の開発に貢献する可能性があります。
なお、本研究の成果は、2025年3月5日にアメリカの科学雑誌「Science Advances」にて発表される予定です。この成果は、薬剤耐性菌に立ち向かう新しい治療薬の道を開くものとして注目されています。
今後も、NTM症に対する新たな治療法の開発が期待されており、この分野におけるさらなる研究が求められます。抗菌薬の適切な使用と新規治療薬の開発が、患者への貢献を促進する助けとなるでしょう。
詳細は、慶應義塾大学のプレスリリースを参照してください。