岡山大学病院と両備システムズが開発した新たなAI技術
岡山大学病院と株式会社両備システムズの研究チームが、国内初となる胆道がんの診断支援を目指したAIシステムを共同で開発しました。このシステムは、経口胆道鏡検査(POCS)で得た白色光画像を、AIを利用して疑似色素散布画像に変換することにより、がんの境界を明確にし、内視鏡専門医の診断精度を向上させることが期待されています。2024年6月13日、米国の消化器内視鏡学会の公式ジャーナル「Gastrointestinal Endoscopy」にてこの研究成果が発表されました。
胆道がんの現状
胆道がんの年間新規患者数は約22,000人に達し、今なおその数は増加傾向にあります。胆道がんによる死亡率は高く、日本における死因の第7位を占めています。5年相対生存率は30%未満と厳しい状況であり、早期診断と治療が生存率向上の鍵とされています。従来の画像検査方法では、病変の適切な評価が難しく、正確な範囲診断が求められています。
経口胆道鏡による観察は、直接胆管内を見ることができるため有効ですが、その難しさも伴います。病変の進展具合を正確に捉えることができず、こうした課題に対して新たな技術が必要とされていました。
AIを利用した疑似色素散布画像変換技術
本研究では、AIの一種である「Cycle GAN」(Cycle-Consistent Generative Adversarial Networks)を用いて、白色光画像を疑似的な色素散布画像に変換する手法が開発されました。研究チームは、消化管内視鏡で得たデータを元に学習を行い、40名の胆道がん患者に対してPOCSを実施しました。このプロセスにおいて、取得した白色光画像や狭帯域光画像、疑似色素散布画像を比較評価した結果、AIによる疑似色素散布画像が病変の視認性に優れていることが確認されました。
この新技術は、胆道がんの範囲診断精度を向上させ、さらには術式の選択とその結果に好影響を及ぼすことが期待されています。正確な範囲診断を行うことで、患者の予後を改善する材料となるでしょう。
医療現場への影響と今後の展望
胆道がんのような難治がんに対する目覚ましい進展は、医療現場において非常に重要な意味を持ちます。このAI技術が普及することで、患者に対する内視鏡診断の質が向上し、効果的な治療法の選択が可能になります。研究者らは今後もこの技術の精度向上に努めると同時に、他の疾患に対しても同様の技術を展開し、社会実装化を目指すとしています。
岡山大学病院と両備システムズは、今後も医療分野におけるAI技術の応用を進め、さらなる研究を継続する意向を示しています。これにより、胆道がんだけでなく、様々な疾患の診断精度向上にも寄与することが期待されています。
まとめ
この革新的なAI技術は、今後の胆道がん診断のスタンダードとなりうる可能性を秘めています。また、岡山大学病院と両備システムズの共同研究は、我が国の医療に新たな風を吹き込み、患者にとっても希望となることでしょう。今後の活用に注目が集まります。