成長戦略のカギを握る「中堅企業」の実態 - 設備投資意欲旺盛、賃上げは様子見 -
2024年5月に成立した「改正産業競争力強化法」により、従業員2,000人以下で従来の中小企業に該当しない企業が新たに「中堅企業」として定義されました。経済産業省は2024年を「中堅企業元年」と位置づけ、これらの企業への支援を強化することで、日本経済の活性化を目指しています。
帝国データバンクは、企業概要ファイルCOSMOS2から「中堅企業」を抽出し、実態分析を行いました。その結果、中堅企業は国内全企業の売上高の16%を占め、地域経済の牽引役として重要な役割を担っていることが明らかになりました。
地域経済を支える中堅企業の存在感
2024年5月時点で、全国に存在する中堅企業は7,749社で、国内企業全体の0.53%を占めています。売上高は324兆6,809億円にのぼり、国内全企業の売上高の15.68%を占めており、大企業の市場占有率に迫る規模です。
都道府県別で見ると、中堅企業数が最も多いのは東京都で、全国の約半数が所在しています。一方、市場占有率では大阪府が22.90%と最も高く、大企業の市場占有率を上回っており、中堅企業の存在感が特に大きい地域と言えます。
コロナ禍の影響と新陳代謝
2014年以降の中堅企業数の推移を分析すると、2019年まではほぼ横ばいで推移していました。しかし、2019年から2024年の5年間で820社減少しており、コロナ禍の影響が大きいことがうかがえます。
減少の主な理由は「減資」で、コロナ禍での経済収縮に伴い、中小企業となることを選択した企業が多かったと考えられます。一方で、「中堅企業から大企業へ」成長した企業も127社あり、コロナ禍の中でも成長ポテンシャルを発揮した企業も存在しています。
設備投資意欲と賃上げ動向
2024年度の設備投資に関する調査では、中堅企業の79.3%が設備投資を「実施」「予定」「検討」していることが分かりました。全企業の58.8%と比べて、中堅企業の設備投資意欲の高さが見て取れます。
投資内容は「省力化・合理化」「IT化」「DX」「研究開発」など多岐に渡り、特に億単位の投資を行う企業が6割を占めるなど、投資規模も大きいことが特徴です。資金調達方法では、「親会社やグループ会社からの借り入れ」の割合が高く、安定した資金供給体制が構築されていることも明らかになりました。
一方、賃上げについては、2023年度は8割の企業が賃上げを実施しましたが、2024年度は「様子見」の傾向が見られました。賃上げ理由は「同業他社の賃金動向」や「採用力の強化」などを挙げる企業が多く、今後の経済状況や人材獲得競争などを考慮した結果と考えられます。
中堅企業の成長と課題
中堅企業は、国内経済を支える重要な存在であり、今後も設備投資や人材育成などを通して成長を続けていくことが期待されます。しかし、コロナ禍や人材不足など、課題も多く存在します。
政府や企業は、中堅企業が成長しやすい環境を整備し、日本経済の持続的な発展に貢献していく必要があります。