シリアにおける地雷被害の現状
2024年12月にシリアの旧政権が崩壊した後、故郷に戻った人々が地雷の危険にさらされる事例が報告されています。特に、シリア東部のデリゾール県では多くの地雷や不発弾が残されており、重大な人身被害が発生しています。国境なき医師団(MSF)は、これに対する対策の強化を訴えています。
地雷の危険にさらされる人々
シリア全土で、特にデリゾール県は放置された爆発物の影響が最も大きく、2025年5月6日までの約5カ月間で発生した471件の爆発物事故のうち、26%がこの地域で発生しています。直近の数日間だけでも、複数の事故が報告され、8人が死傷する痛ましい事態が見受けられました。これらの事故によって、特に子どもたちが多く犠牲になっていることが確認されています。
負傷者の治療状況
MSFシリア活動責任者のウィル・エドモンド氏は、「私たちはデリゾールの病院で地雷や不発弾で負傷した患者をほぼ毎日診察しています」と語ります。多くの負傷者は事故に遭う前には畑や道路で活動していた人々であり、命に関わる重傷者が多数を占めています。特に、子どもが負傷者の約40%を占めるというデータは衝撃的です。
医療施設の破壊とその影響
シリア内戦の影響で、デリゾール県では医療施設を含むインフラが広範囲にわたって破壊されました。地雷による事故は、単に人命の損失をもたらすだけでなく、地域社会の復興をも妨げています。 MSFは既に医療施設内で不発弾を発見しており、その存在は未解決のまま残されています。
地雷による子どもたちの悲劇
ハワイジュに住む10代の少年アフマドさんは、地雷によって右足全体と左足の一部を失いました。彼は「走ることができなくなったけれど、友達と遊ぶことはできる」と話しますが、彼の苦しみを理解するには限界があります。2024年から2025年の間に、子どもたちが地雷による事故で91人が命を落とし、289人が負傷しています。
医療へのアクセスの困難
負傷者は、適切な医療を受けることが難しい現状にあります。緊急搬送システムが整備されていないため、民間の高額な交通手段に頼ることが多く、医療機関へ行くこと自体が大きな負担となります。経済的理由から医療を受けられないケースも多いのです。
元小麦農家のアリ・アブド・ハラフさんは、バイクで移動中に地雷を踏んで怪我をした経験を語ります。彼は民間の診療所に前金で支払い、やっとの思いで治療を受けたとのこと。地雷による負傷は、生活の基盤をも奪う深刻な問題です。
必要な支援と未来
この問題を解決するためには、地雷対策に取り組む組織への資金援助が必要です。また、地雷撤去活動を進め、負傷者が適切な医療を受けられる環境を整備することも急務です。国際社会は、この危機的状況に対し迅速な対応を求められています。
MSFは、緊急医療体制の強化のみならず、地雷撤去活動の拡充を進めるよう呼びかけています。人々が安全に生活を再建できるよう、必要な支援が急務となっている現状です。