Quantum Meshとugoの提携について
2023年10月、業務DXロボットを開発する株式会社ugoとエッジデータセンターを手がけるQuantum Mesh株式会社が提携したことを発表しました。この提携の目的は、製造業の現場データを安全に守るための新たなエッジコンピューティング基盤の構築です。
業務提携の概要
この提携では、Quantum Meshが提供する「KAMUI」と呼ばれる液浸冷却データセンターと、ugoのロボットがエッジサーバー及びネットワークを介して連携します。ロボットはその活動の中で生成した操作ログやセンサー計測値、模倣学習に使用するデータを即座にエッジサーバーへ送信します。これにより、AIの学習処理やデータ蓄積が現場で行えるため、低遅延でリアルタイムな制御が実現します。これまでクラウドや遠方のデータセンターに依存していたプロセスが、現場設備内で完結することから、重要なデータの外部送信が不要になり、セキュリティリスクが大幅に軽減されます。
今後の展開
今後は、製造の現場での実証実験を通じて、ロボットとエッジAIの最適化を進めていく予定です。この知見は、他の工場や産業へ2026年から順次展開していく計画です。ugoは、ロボットの自律性向上と高度なAI学習機能の開発を進める一方、Quantum Meshは液浸冷却技術など、エッジデータセンターの効率化と小型化に努めます。両社は、安全かつ効率的なスマートファクトリーの実現を目指して、日本全国の生産拠点にこのソリューションを展開し、データ保護と活用を両立する新しいインフラ基準を築いていきます。
Quantum Meshのエッジインフラ技術
Quantum Meshが提供するエッジインフラ技術は、工場などの現場に近接して小型高性能のデータ処理環境を構築できることで知られています。この技術は、従来の空冷方式よりもエネルギー消費を大幅に削減できる液浸冷却を採用しており、限られたスペースで高密度の計算処理が可能です。これにより、AIによる高度な演算処理を現場内で安定的に行うことが実現されます。また、エッジ側では堅固なセキュリティ環境が確保されており、製造現場から重要なデータが漏洩するリスクを低減しています。クラウドに依存せず現場でデータを直接処理することで、ロボット制御やデータ分析に関する低遅延かつリアルタイムな処理が可能となり、安全性と効率性の高いスマートファクトリーを支える基盤となります。
ugoの「Physical AI」と模倣学習キット
ugoが提唱する「Physical AI」は、AIの学習能力をロボットの物理的な動作に結びつける革新的なコンセプトです。このアプローチにより、ロボットの動作に関するデータや実際の現場でのセンサー情報を活用し、AIによって模倣学習や強化学習が行われます。
このAIトレーニングを支えるのが、ugoが提供する「AIロボット向け模倣学習キット」です。このキットには、双腕ロボットugo Proを遠隔で操作するためのバイラテラルコントローラや、動作データを収集してAIに学習させるためのソフトウェアが含まれています。これにより、熟練作業者のノウハウをロボットに簡単に移植することが可能で、プログラミングスキルがない担当者でも、新たな動作を教えられます。このようなアプローチによって、生産現場でのロボットの迅速な適応と機能向上が実現されます。
代表者コメント
両社の代表者はこの提携に大きな期待を寄せています。Quantum Meshの篠原代表取締役は「現場で生成される高精度なデータは非常に敏感で価値があります。弊社はこのデータを安全に、リアルタイムに処理できる基盤を整えることを使命としています」とし、データのレイテンシ軽減とセキュリティ強化の両立を目指すと述べました。
一方、ugoの松井CEOは「ロボットの稼働から得られる重要な情報を低遅延で管理することが不可欠です。Quantum Meshとの提携により、運用信頼性を確保しながらフィジカルAIの社会実装を進めます」とコメントしています。
このように、両社のパートナーシップは、日本の製造業におけるデジタルトランスフォーメーションとデータセキュリティの新しい名刺となることが期待されています。