大学淘汰時代における京都芸術大学の試み
大学教育は常に進化を遂げてきましたが、現在「大学淘汰時代」と呼ばれる環境に直面しています。少子化の影響により、多くの私立大学が定員割れや赤字経営に悩む中、京都芸術大学(京都市左京区)の取り組みは注目されています。この大学は、2026年度入試の「総合型選抜型Ⅰ期」において過去最高の志願者数5,713名を記録し、前年比130%の増加を達成しました。これは、長年培ってきた「体験授業型入試」に加え、新たに実施した「探究プロセス型」入試が影響しています。
大学淘汰時代における課題
文部科学省や東京商工リサーチによると、私立大学の過半数が定員を満たせず、約4割は赤字経営にあるとされています。これにより、大学は経営の安定と教育の質を両立させる必要に迫られています。この状況下で、文部科学省は高校教育改革の一環として「探究学習」を推進しています。探究学習は、生徒自らが課題を設定し、調査や考察、表現を通じて主体的に学ぶことを目指す教育モデルです。これは、単なる知識の記憶や受験偏重型教育から脱却する試みでもあります。
教育のパラダイムシフト
文部科学省が公表したデータによると、今後の社会で求められるスキルは、単なる知識や技能を超え、課題発見力や創造力、協働力などの探究的スキルが重視されるとされています。特に「自ら問題を見つけ、考え、他者と協力して解決する力」のニーズが急増しており、教育現場でもこの変化に対応した学びの方法への転換が求められています。
20年以上前から探究を重視した大学
京都芸術大学はこのような社会の変化にいち早く対応し、2002年より実施している「体験授業型」入試を通じて、知識の習得だけでなく、受験生の取り組む姿勢や表現力を直接評価しています。この仕組みは受験生が入学後の学びを具体的にイメージできる機会を提供し、大学が「共に学ぶ適性」を確認する手段として高く評価されています。さらに、2023年からはアートやデザインの経験の有無にかかわらず、受験生の「探究のプロセス」や「熱意」を多角的に評価する「探究プロセス型」入試を導入。受験生は提出物として「探究学習ワークシート」と5分以内の説明動画を利用して、課題設定の視点や探究の深さ、表現力などを評価の対象としています。
誰もが挑戦できる入試を目指して
この取り組みの結果、京都芸術大学の2026年度入試の総合型選抜では志願者数が前年比130%の5,713名に達しました。これに対して教育関係者からも注目が集まり、探究学習の力を正当に評価する入試制度としての新しいモデルが打ち出されています。この大学は入試制度改革を続け、高校生一人一人の可能性を尊重し、未来を見据えた学びの場を提供していくことに力を入れています。
独自のプログラムとサポート体制
京都芸術大学では、新入試「総合型選抜1期 探究プロセス型」を受験する学生のために、各学科が探究プロセス対策講座を夏期に開催しています。この講座では、教員が直接指導する形で探究学習を体験できるようにサポート体制を整えています。また、合格者は「0年生」として特別プログラムに参加し、大学での学びに必要な基礎を身につけることができる仕組みが整っています。
未来の教育に向けた意欲
京都芸術大学は「探究する力」を評価する新しい仕組みを通じて、教育と社会をつなぐ未来のモデルを発信していきます。社会が変わる中で、学生の探究心を引き出し、世界で通用する力を育むことが、大学の使命であり、社会に必要とされる人材を助成することが求められています。今後の展望として、京都芸術大学はその教育目標を達成するために、一層の努力を続けていくでしょう。