希少疾患患者が全ゲノム情報を取得できる新事業が始動
希少疾患に苦しむ患者は、効果的な治療法や正確な診断を受けるまでに長い時間がかかることがあります。このような背景の中、ジーネックス株式会社は、希少疾患患者が自らの全ゲノム情報を取得し、管理することができる新しい事業を開始しました。この取り組みは、希少疾患の理解を深めるだけでなく、患者にとっても大きな意義があります。
新たな取り組みの背景
指定難病の患者は、診断が確定するまで数十年を要することも珍しくありません。しかし、近年の技術の進展により、個々のゲノム情報を詳細に調べることが可能になってきました。全ゲノム情報は、患者自身はもちろん、同じ病に悩む他の患者にとっても重要な資源となります。今まで日本には、個人が自分のゲノム情報を直接得て管理する手段が存在しませんでした。
事業の概要
ジーネックスはミトコンドリア病に焦点を当て、患者が自身の全ゲノム情報(以下、全ゲノム情報)を取得し、医療現場へと還元できるようにします。2021年に施行された倫理指針に基づき、埼玉医科大学や千葉県こども病院、順天堂大学との共同研究を開始しました。インフォームド・コンセントの取得や唾液検体の収集が整備され、患者から提供される全ゲノム情報は「Personal Data Bank (PDBank)」によって適切に保護され、安全に管理されます。
期待される成果
ジーネックスは、16歳以上のミトコンドリア病患者から全ゲノム情報を取得し、検査レポートを提供することで、新たな治療方法や診断法の開発を目指します。また、15年以上にわたって蓄積された臨床情報とゲノム情報を組み合わせることで、革新的な成果を生み出すことを目指します。
将来展望
ジーネックスは、患者が自身の全ゲノム情報を「誰に」「いつ」「どのように」提供するかを一元管理できる未来を描いています。この事業はその第一歩であり、同時に製薬企業や患者支援団体との連携を強化し、創薬や治療研究に繋げていく方針です。また、約4億人が苦しむとされる希少疾患や未診断患者に向けた取り組みも視野に入れています。
課題と可能性
希少疾患領域は、これまで事業性や個人情報管理の観点からリスクが高く、企業の治験が進みにくいとされています。しかし、最近では製薬企業が希少疾患の研究開発に注力する動きが見られます。この追い風を受けて、ジーネックスは希少疾患を突破口として、ゲノム医療エコシステムの構築に挑戦しています。
用語解説
- - ミトコンドリア病: ミトコンドリアの機能低下による病気で、出生5000人に1人の割合で発症し、根治的治療法は現在存在しません。
- - 全ゲノム情報: ヒトゲノムの全ての情報を含むもので、症状のみからの診断が難しい希少疾患にとって貴重な手段です。
- - Personal Data Bank (PDBank): 個人情報を安全に管理するサービスであり、情報の利活用に関する同意状況も適切に管理されます。
まとめ
ジーネックスの取り組みは、希少疾患患者の未来を変える可能性を秘めています。全ゲノム情報の取得と管理が進むことで、より多くの患者に適切な治療や診断が行えるようになることを期待しましょう。