日清オイリオグループ株式会社(社長:久野 貴久)と農業・食品産業技術総合研究機構(理事長:久間和生)は、フライ食品の「おいしさ」を官能評価の視点から探求し、評価用語の体系化を進めてきました。この共同研究の目標は、消費者により豊かな食生活を提供する新しい食品の開発を促進することです。
近年、市場でのフライ食品の人気が高まる中、それらの品質評価を数値化する技術への需要も増加しています。特に「官能評価」とは、人が実際に食品を食べて感じることを基にした評価方法であり、これがフライ食品の多様な特徴を理解するために欠かせない要素です。この研究では、食品が製造から消費に至る全てのプロセスにおける「おいしさ」に関する共通理解を確立することを目指しています。
本研究の具体的な活動の一環として、代表的なフライ食品であるコロッケに焦点を当てました。研究グループは、流通しているコロッケの特性を包括的に評価するために、50種類のモデルコロッケを調製しました。16名の熟練した官能評価者が、これらのコロッケの外観、香り、風味、食感について言葉で表現し、約600語の評価表現を収集しました。その後、これらの表現を整理・統合・分類し、最終的には75語からなるコロッケの官能評価用語体系を作成しました。
更に、この評価用語体系の性能を検証するために、実際に市販されているコロッケに対する官能評価を行いました。32の主要評価用語を選定し、設定した試料に基づいて15種類の市販コロッケを評価した結果、この新たな評価体系がフライ食品のおいしさを正確に反映できることが確認されました。
今後は、選ばれた32語の他にもさらなる評価基準を設定し、全ての評価用語に対する類義語の拡充も進める予定です。この評価用語体系の実用化により、異なる組織間での品質情報伝達が円滑になり、フライ食品のおいしさに関する特性評価の精度向上が期待されます。
さらに、これによって製品開発のペースが向上し、より効果的な品質管理が実現できるでしょう。食品業界において、今回の研究成果が普及することで、フライ食品を取り扱う多くの関係者間のコミュニケーションを円滑にすることに寄与することが期待されています。
この研究の成果は、日本食品科学工学会第71回大会においても発表されます。発表のタイトルは「フライ食品の官能評価語体系の開発」で、日清オイリオグループの研究者たちがその内容を共有します。台風接近のため大会はオンラインでの開催となりましたが、議論の重要性は変わらず、多くの人々の関心が寄せられていることが伺えます。
日清オイリオと農研機構は、この共同の努力を通じて、食品のおいしさを科学的に評価する技術を磨き続け、未来の食品市場に新しい魅力を提供するための研究を推進します。食用油脂がフライ食品のおいしさに与える影響を可視化し、油脂の魅力を最大限に引き出す新たな食品創出に向けた取り組みを見守りたいものです。