南相馬市が進める農地維持支援への挑戦
福島県南相馬市では、農地の維持を支援するための新しい取り組みが始まりました。市は、LAND INSIGHT株式会社とPenguin Labs合同会社と連携し、AIと衛星データを駆使した「プッシュ型支援」の実証事業に着手します。この取り組みでは、農地の利用状況を可視化し、市が農家に直接働きかけることを目指しています。
プッシュ型支援とは?
従来の農地維持支援では、地域集落からの申請を待つ受動的なアプローチが一般的でした。しかし、この新しい「プッシュ型支援」では、市が積極的に情報を提供し、共同で申請を促す方法に変更します。これにより、より多くの農地に支援が届くことが期待されています。
現状の課題
南相馬市においては、農林水産省のデータに基づくと、交付対象農地の多くが活用されていないのが現状です。急傾斜地では約50%、緩傾斜地でも約30%と、まだ多くの農地が制度の恩恵を受けていないことが示されています。高齢化や担い手不足、申請手続きの煩雑さが要因となり、支援が届かない地域が多く存在しています。
実証事業の具体的な内容
この実証事業では、南相馬市内の旧石神村および旧上真野村における約1.2万筆の農地を対象に、衛星データや地形データを分析し、支援が可能な農地を一筆単位で特定します。具体的には以下のような取り組みが行われます。
1.
農地の可視化: 国土地理院の標高データを用い、交付要件を満たす農地を抽出。
2.
交付状況のギャップ分析: 現在交付を受けている農地と未活用の農地を比較し、優先対応すべき集落を特定。
3.
交付見込額の試算: 対象農地についての想定交付額を算定し、農家に提供。
4.
申請業務の効率化: AIを活用して申請業務を簡素化するための提案。
これらの実施結果は、農地管理の効率化を図りながら、必要な情報を農家に直接届けるための礎となります。
新たなモデルの展望
今回の実証を成功に導くことができれば、全国の中山間地域の自治体にも応用が可能です。LAND INSIGHT社は、すでに南相馬市で開発した「圃場DX」と呼ばれる農業行政の現地調査効率化サービスを120以上の自治体で展開しています。また、Penguin Labs社はこのプロジェクトで開発したシステムを利用して、農業行政業務の効率化を進め、他の地域への展開も視野に入れています。
まとめ
南相馬市の取り組みは、単に農地の維持を支援するだけでなく、新しい農業政策の実装モデルとして大きな意味を持ちます。今後、このプッシュ型支援方式が全国に広がっていくことで、多くの地方で農業と農地が守られ、持続可能な形での発展が期待されます。AIと衛星データを融合させた新しいアプローチが、農業の未来を切り開いていくことに注目です。