ヤングケアラー支援の現状と課題
近年、ヤングケアラーに対する理解と支援の必要性が高まっています。そうした中、一般社団法人ヤングケアラー協会が実施した調査結果が公表され、学校教育現場におけるヤングケアラー支援の実態と課題が明らかになりました。
調査概要
この調査は、全国の小・中・高等学校の教員を対象に行われ、309名が回答しました。オンラインアンケートを通じて、ヤングケアラーの把握、支援の難しさ、学校と外部機関の連携の現状、加えて教員が求める支援策について分析しました。
調査結果のポイント
1. ヤングケアラーの把握が難しい理由
調査により、ヤングケアラーを把握するのが難しい理由として、主に「家庭内事情への立ち入ることへの躊躇」(64.7%)、次いで「生徒本人の自覚の欠如」(55.0%)および「普段の関わりではわからないことが多い」(51.1%)との結果が出ました。プライバシーへの配慮や日常生活における気づきにくさが大きな課題であることが浮き彫りとなりました。
2. 支援・連携における課題
支援や連携の障壁として、「適切な支援方法の見極め」(57.3%)や「生徒・家族との関係づくり」(54.7%)、さらには「外部機関との連携の難しさ」(49.8%)が挙げられました。学校内での支援だけでなく、自治体や関係機関との情報共有が十分でない現状がわかります。
3. 学校での支援取り組み
学校内では「校内での情報共有」(56.6%)や「個別支援」(54.4%)が実施されていますが、「自治体との連携」に関する取り組みは39.2%にとどまっています。教育機関と外部機関の協力体制を強化する必要があります。
4. 教員が期待する支援
教員が求める具体的な支援策には、「専門家や支援員の派遣」(68.0%)や「外部機関との連携支援体制の構築」(56.3%)、また「教員向け研修の充実」(50.1%)が含まれます。これにより現場の負担を軽減し、より効果的な支援を行うことが求められています。
5. 統一的な対応ルールの整備
調査によれば、ヤングケアラー支援に関する統一的な対応指針が「なかった」と答えた学校は71.2%で、これは支援方針の未整備を示します。また、「ヤングケアラーに関する研修を受けたことがある」と答えた教員は22.3%にとどまり、教育現場での理解を深める機会が限られていることも明らかになりました。
調査から見える学校現場の課題
本調査を通じて、学校現場でのヤングケアラー支援についての以下の重要な課題が指摘されました。
- - 学校での統一的な対応指針の欠如: 学校ごとに異なる対応方法が横行しており、統一的な指針が必要です。
- - 外部機関との連携不足: 学校内での支援が進む一方で、自治体や福祉機関との連携が不十分であることが問題視されています。
- - 教員向け研修の不足: ヤングケアラーについての研修機会が少ないため、教員が支援に必要な知識やスキルを身に付ける機会が限られています。
これらの課題解決に向けて、学校、行政、関係機関が連携して効果的な支援体制を構じることが求められています。調査の詳細なレポートは、
こちらからダウンロードできます。
一般社団法人ヤングケアラー協会について
ヤングケアラー協会は、ヤングケアラーを支えるためにさまざまな活動を行っています。相談窓口の運営や、教育機関向けの研修を通じて、ヤングケアラーが抱える課題の解決に向けた取り組みを推進しています。詳しくは
公式ウェブサイトをご覧ください。
また、今回の調査はPolicy Fundの支援を受けて実施されました。これからも、社会課題の解決に向けて、みんなで考え、行動していくことが大切です。