デジタル技術が導く「シン・物流」の未来
物流業界は、私たちの生活に欠かせない存在である。特にインターネットショッピングの普及により、選んだ商品を迅速に受け取ることが以前にも増して求められている。しかし、労働人口の減少や即時配送 demand による配送業務の負担増、環境問題に対処するためのCO₂排出削減という課題が、この業界には数多く存在する。
こうした問題解決に向け、注目されているのが「シン・物流」であり、これは AI(人工知能)、IoT(モノのインターネット)、そして5Gなどのデジタル技術は、物流のDX(デジタルトランスフォーメーション)を加速させている。本書『シン・物流AIとロボットが拓くデジタル時代のロジスティクス』では、その新たなアプローチについて詳しく解説している。
著者の鈴木 邦成氏と中村 康久氏は、物流の各領域におけるデジタル技術の導入を推奨し、実際にどのような効果が期待できるのかを述べている。以下は、本書の主要なテーマをいくつか取り上げる。
1. 輸配送領域のデジタル化
運送業界では、トラックドライバーの働き方改革が急務である。特に長距離輸送においては中継輸送を活用し、効率を上げる提案がなされている。また、宅配便のデジタル化や無人搬送フォークリフトの導入も進んでいる。これによって、急増する配送ニーズに応える事が可能となる。
2. 保管・在庫管理の刷新
倉庫の業務を効率化するために、携帯電話技術を利用した「コネクテッド」な環境が求められている。例えば、ロケーション管理を活用し在庫の可視化を図ることで、庫内の業務効率が格段に向上する見込みだ。また、自動運転フォークリフトやロジスティクスドローンを使うことで、庫内作業の自動化も実現しつつある。
3. 荷役・物流加工の自動化
ピッキング作業や検品プロセスのデジタル化によって、省人化・自動化が進められている。これにより、業務の円滑化と効率化が期待でき、物流センターの事務作業も自動化が進むことで、時間の節約が図られる。
4. 輸送包装業務の革新
AIの活用により、自動梱包機の普及が加速しており、さらに定温輸送へのニーズが増加していることがトレーサビリティの向上にもつながる。工場間輸送への通い箱利用や、共同物流に向けた梱包統一の方策も提起されている。
書籍の中では、これらの改革がどのように進められ、物流業界全体にどのような影響をもたらすかを深く掘り下げている。著者らの専門的見地から、多様な知見や事例が数多く紹介されており、今後の物流業界にとって、間違いなく必見の一冊となるだろう。
また、本書は、経営課題や社会課題をデジタル技術で解決することを目指した『DIGITAL X(デジタルクロス)』というシリーズの一環として出版されている。最近の物流業界が直面している難題に、どのように立ち向かうかを考えるための貴重な資料として、多くのビジネスマンも注目することが期待される。
まとめ
最後に、物流のデジタルトランスフォーメーションは単なるトレンドではなく、業界全体の未来を形作る重要な要素であり、これからの社会にとってますます重要になるだろう。本書を通じて、読者はその可能性を実感し、新たなビジネス機会を見出すヒントを得ることができるはずだ。