人的資本経営調査が明らかにした企業の課題
日本経済新聞社が2025年度版の人的資本経営調査を行い、企業における人的資本に関する現状と課題について明らかにしました。この調査は、主要企業の人事担当者を対象に、ワークス・ジャパンと共同で実施されました。
CHRO設置率の上昇
まず、調査結果の中で注目すべき点は、最高人事責任者(CHRO)が設置されている企業の割合が35%に達したことです。この数値は、2024年度版から3ポイントの上昇を見せています。特に、10,000人以上の規模の企業では設置率が54%で安定を見せていますが、3,000人未満の企業では設置率が17%と横ばいであり、人的資本経営の導入に遅れが見られます。
リーダー育成の重要性
次に、企業が抱える人材育成の課題として最も多くの企業が挙げたのは「次世代リーダーの発掘・育成」で、48%がこの問題を認識しています。また「マネジメント層育成」も45%の企業が抱える悩みとなっています。このデータは、業種や従業員数にかかわらず共通の課題であり、次世代リーダーの確保が急務であることを示しています。
一方で、「DX人財発掘・育成」や「経営人材の選抜・育成」に関しては、回答率が前年よりも低下しており、取り組みにおける進捗が課題となっています。特に前者は40%から33%に下がり、企業のデジタルトランスフォーメーションに向けた人材の重要性が再認識される必要があります。
厳しい人材採用環境
さらに、新卒や中途採用に関しても厳しい状況が浮かび上がりました。外部からの採用目標数を「充足できていない」と答えた企業は34%に達しています。これは、企業の約3分の1が適切な人材を採用できていないことを示しています。前回の調査と比べても状況は変わらず、特に小規模企業になるほど充足率が低下しています。
また、「充足できている」と答えた企業は前回よりも減少し、競争が激化する採用市場の厳しさが改めて浮き彫りになりました。採用市場の環境において役立つ戦略や施策が必要だと感じる企業は多いことでしょう。
結論
今回の人的資本経営調査は、多くの企業が次世代のリーダー育成に悩んでいることや、人的資本を未だに効率的に活用できていない現状を示しています。これらの課題に対処するためには、企業文化や戦略の見直し、人事制度の強化が不可欠です。今後の人事戦略においては、リーダーシップ開発と採用方針を一層強化していくことが求められています。